Deathly Hallows(Part 1)-16
聞けば、ドビーも"え?"と同じ調子で聞き返し、もう一度答えた。
「あなたから魔法が去る瞬間です。当然です!"リーバー(去る者)"なのだから。こうやって話している間かも、寝ている間かも、帝王と対峙している瞬間かも。自由に去るから誰にも分かりません!」
両手をパッと開いて見せるドビーに「"分かりません!"じゃないよ…!」とハリーが口を挟んで案じる。隣のハリーを振り返る名前の表情は、ロンやハーマイオニーが見ても明らかに動揺している。
「…私はどうすればいいの?」
「主人を信じることです。信じていなければ、信じれる主人へ変わろうと去ります」
「ハリーを、?じゃあ簡単ね。いつだって信じてる」
名前は安堵するように、皆を心配させないように、気を付けて声を明るくする。簡単?とドビーが聞けば、そんな明るい調子は簡単に消え、再び表情は深刻になった。
「ひとつも簡単ではありません。 心の奥底は、意思とも異なる」
「―…」
「そう思おうとして思うものではない」
名前はダンブルドアに話されたときとはあまりに違う心地の同じ言葉に、ドビーを見たまま呆然とした。ハリー達が案じだすほど、打ちひしがれているようにも見える。
「もう君たちは、心配に及ばない。互いを、心から信じておる」
「…当然です。ハリーを疑うなんて…」
「いいや、名前。難しいことさ。じゃからわしは君に繰り返しておった。
…心の奥底は、意思とも異なる」
「仮に帝王が勝つと考えれば、この魔法は帝王に仕えてしまう?」
「、…」
名前のとんでもない仮説に、思わず衝撃に耐え口を挟みそうになるハーマイオニー。
先ほどみたいに笑って否定してほしかったが、ドビーは大きな瞳に悲しみを帯びさせて、心配そうに両手を握り、見つめ返すだけだった。
…――
翌日の日中の街。事前に新聞などで、魔法省の人間を三人、目星をつけて作戦に出た。
マンダンガスや、ロケットを追っていた話をすれば、名前には自然と、分霊箱のことを話すほかなくなってしまった。結婚式の日に訪れた当時の大臣の言葉と繋がって意味がよく分かり、名前はなんだかクリアになった。
"先刻 ハリーに危険が…"とダンブルドアが夢で話したのも、さては分霊箱探索中のことであったのかと、名前は同時に一層案じた。
ターゲットを尾行し、気絶させてゴミ捨て場内へ連行する。入念に練った作戦のもと、なんとかアンブリッジに辿り着けそうな、目星通りの三人を揃えた。ぐったりと深く眠った三人の髪を、それぞれ少しずつ、ハーマイオニーが抜き取って小瓶へ入れ、ハリー、ロン、名前を振り返る。ハリーとロンには小瓶を手渡して、よく言い聞かせた。
「いい?計画どおりにね。必要以上に喋らないこと。普通に振る舞うのよ、他の人と同じように。名前はここで見張りを」
「…」
「うまくいけば中に入れる。そして…」
「ムチャだよな」
「そうよ!」
割って入ったハリーに、合図にするようにハーマイオニーは腹を括った。以前の作戦の夜とは違う不安に襲われ、名前は堪えるように深呼吸を繰り返す。ハーマイオニー、私と代わる?と提案する名前と、作戦は変えないと答えるハーマイオニーは、まるで作戦の夜のムーディと名前のままだった。
「気を付けて、みんな…どうか無事で…難しそうになったらすぐに逃げて」
「あなたもね、名前」
「魔法は最小限に」
置かれた状況は自分も困難を極めているというのに、ロンは言い聞かせて、頷く名前に笑みすら返す。
「…マトモじゃない」
「全くよ」
「世の中がマトモじゃないんだ。 …分霊箱を探すぞ」
見ず知らずの大人の、しかも魔法省の三人を眠らせて、物陰にこうして連行している。非現実的な自分達の行動に迷いの見えるハリーとハーマイオニーを、ロンが的確に添えて正した。
姿を変え、服を奪って静かに出ていく三人の背中を、名前は祈る思いで見送った。