Deathly Hallows(Part 1)-18



身を引き締めて足を踏み入れると、ロンが化けたカターモールの妻が裁判にかけられている。尋問するアンブリッジの首には、探し求めたロケットが下げられていた。

「…―!」

ハリーは咄嗟に、ロンの上着を乱暴に掴み、ひっ捕らえて此方へやって来たような芝居をうつ。

「…どうも。アルバート」
「……!」

まさかハリーとは思わないアンブリッジは自然と礼を告げ、隣辺りのハーマイオニーは自然を装いつつ不安の表情を向ける。見下ろす魔法使いは気にも止めない冷徹な態度。ヤックスリーに至っては勝ち誇るようにふんぞり返ってカターモール夫妻を見下している。
高い天井のほうでディメンターが複数漂う影も、ハリーは見上げて認識した。

「杖を盗んでなんかいません…!! 私は魔女です…!」
「杖は魔女しか選びません。あなたは違う」
「レッジ…!なんとか言って……!」

苦しむ半純血の魔法使いの声を傍で聞き、ロンは深刻な顔を、ハリーは、怒りを露わにして片手に杖を構えた。もちろんアンブリッジからも見えており、眉をひそめる。

「何をする気?」
「ウソだな ドローレス… 」

見守るハーマイオニーの緊張は頂点に達し、ハリーに釘付けになる。

「"ウソをついてはいけない"」

ぼこぼこと波立って、ランコーンに化けた姿はみるみるハリーへ戻っていった。戻り切るより早く、ハリーはアンブリッジへ魔法を撃った。

「"ステューピファイ"!」「――!!」

勢いよく撃たれ背もたれに打ちつけ、気を失ったアンブリッジの首からすかさずハーマイオニーがロケットを引きちぎる。杖を構えたヤックスリーにロンが先手を打ち、攻撃をしかけた。ロケットとメガネを手早くハーマイオニーがハリーへパスし、足早に法廷から逃亡をはかる。
境界を無くし一気に追いかける、何体ものディメンター。閉めたエレベーターの柵越しに不気味な手をこちらを捕まえんと必死に伸ばし、魂を吸い寄せる。


「? ……」

ゴミ置き場。胸騒ぎを覚えた名前は三人から目を離し気配をうかがった。もしや彼らになにか..と考える背後で、声もあげず意識を取り戻したカターモールが、眠りこける二人と、服をはぎ取られた自分の姿を見下ろしていた。よく考えても分からないまま、数歩先の名前に声を掛けた。

「… おい」
「!!」

肩を跳ねさせて振り返った名前は心底驚いている。こうなったときの算段は立てていなかった。高まる緊張で呼吸が早まらせながら、カターモールと同じぐらい戸惑う表情で問いかけた。

「私をご存知?…」
「君を?いや…… 一体何者だ」
「……よかった」

腹をくくって、名前は指を鳴らし、姿をくらました。一瞬驚き、居なくなってしまった名前を不思議がっていると、あとの二人もうめき声とともに意識を取り戻しつつあった。

煙突飛行ネットワークの奥の暗がりに、名前は姿現しをした。宿る魔法の特性といえ不可能だった可能性もあった賭けにうるさくなる心臓を落ち着かせながら、平然を装い人込みに合流する。漏れ鍋から失敬してきたコートはうまく名前の姿を隠してくれ、フードを被らなくとも助かった。魔法のにおいを不審がる素振りも、誰も見せてはいない。
魔法省に足を踏み入れるとは。だがハリー達を案じるとこうするしかなかったし、あの三人の監視もどう考えてもタイムリミットに達していた。

「…!」

多少骨を折る覚悟をしていたハリー達探しは、簡単に成し遂げられたが、名前は遠巻きのその彼らの姿を見て目を疑った。ハリーもハーマイオニーも、サイズの違う大人の服を借りた、もとの背丈や顔に戻ってしまっている。

―ボォォ…!―

「!」

少し先の暖炉からやって来た、服を奪われたままのカターモールに、名前は思わずきもち俯く。彼もハリー達のほうを見て同じく目を疑っている様子だったが、それは妻が見知らぬ少年とキスをしているからであった。

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