Deathly Hallows(Part 1)-19
名前をとうに遠ざけ、カターモールはハリー達のそばまでたどり着いていた。名前は遠巻きから、自然を装って歩くのをやめないまま、状況把握に努める。うかつにでしゃばると、自分まで捕まってしまう。
ハリー・ポッター…?
ハリー・ポッターだ…!!
当然、姿も隠さず歩くハリーに周囲は騒ぎ出す。名前の見る、ハリー達と反対のほうで固まっていた警備の集団が、ハリーを捕らえんと走りだした。
「…! …!」
こちらへ向かって駆けるハリー達と、警備の動きを注視しながら、名前はタイミングを間違えないようにポケットの杖に手をかざす。
エレベーターで追いかけてやってきたヤックスリーが、躊躇せず攻撃魔法を放ち、騒ぎがみるみる大きくなる。
噴水を大きく回りながら、ハリーがヤックスリーを阻もうと積まれた新聞目掛けて魔法を放ち、自分の手配書を無数にばらまいた瞬間、名前は彼らに向かって走り出した。
「こっちへ!! みんな!」
「名前…!」
―"リーバー"だ!!―
皆の一番最後につきながら、背後を警戒し懸命に走る。ヤックスリーの杖で魔法を跳ねのける間、耳にはカン!カン!と、暖炉の逃げ道を塞ぐ、柵の閉ざされる音が届きだす。攻撃を阻みこうも走りながらでは皆を連れて姿くらましなどできそうにない。迷う暇もなく姿くらましは諦め、間違えないように暖炉を選び、名前は三人を誘導した。
「"エクスペリアームス"!」「ー!!」
名前のすぐ横を、ロンが後ろ手で放った魔法が通過し、ヤックスリーの杖を手から弾く。それから一斉に、閉ざされる直前だったであろう暖炉へ、ハリーを先頭に飛び込んだ。
「ー… !」
直前、一番背後で守っていた名前の背に、ロンの腕が回る。
ロニー? そう思う暇もなく、暖炉のネットワークの波に、名前の身は飲まれていった。
―バサバサ…!―
「っ…!!」
周囲の音は急に止み、名前の体は一面枯れ葉の上に転がった。名前は警戒を解かず、着地で落とした杖を慌てて取り立ち上がって構えた。警戒したが、ヤックスリーも、ハリー達の気配もない。
ネットワークの勝手に慣れないせいか、自分だけ違うところに来てしまったようで、ハリー達はそう遠くないはずだと前方を見渡すが、ただ枯れた色の森が広がているだけだった。ここにきてはぐれるとは…と肩の力を抜いたところで、攻撃呪文が名前の首に命中した。
「!? ぐっ…」
―バサ、―
成す術なく名前は枯れ葉に倒れ込む。体のどこにも力が入らない、遠のく意識を必死に手放さない間、枯れ葉を踏む複数の足音が近付いた。
「これはこれは…妖精のほうから来るとはありがたい」
「あの死喰い人への土産にもなるぞ……」
笑うグレイバックの隣につき、ニヤと名前を見下ろして笑うスカビオール。声だけ耳にしながら、名前は目を閉じてしまった。
ハリー達はそこからそうは遠くない別の森に、ロケットと無事に辿り着いていた。ヤックスリーに阻まれたことで片腕に大怪我を負いガタガタと痙攣するロンを、ハーマイオニーが涙ながらに診ている。
「ハリー、早く、私のバッグを取って。! ハナハッカのエキスを…!」
「、! 、!」
「早く!!」
親友の姿に、ハリーもハーマイオニーも明らかに取り乱している。ロンの血を付けた彼を診るハーマイオニーの手も、バッグを漁るハリーの手も、忙しなく、落ち着かない。
「うぅぅ゛…!」
「大丈夫よ!! 、!ヒリヒリするだけ、!」
ヤックスリーの追手で元のグリモールド・プレイスには戻れないと、ハーマイオニーの判断で此処に辿り着いていた。
「戻ったけどヤックスリーにつかまれて…、!もうあそこにはいられないと思って、…!移動したら 名前は見当たらないし…、…ロンが"ばらけて"しまった…!」
「……」
液を落とした箇所から、ロンの痛々しく裂けた腕はみるみる治り、呼吸も次第に落ち着いた。並行してハーマイオニーの声も、だんだんとトーンが戻りだす。まだ正常でない足取りで立ち上がり、数歩離れると、ハーマイオニーは呪文を唱えた。
「、何?」
「…保護呪文よ。前みたいに襲われないように。…名前はきっと無事よね?」
「もちろん。きっと心配ない」
「テントを出して」
「…テント?」
互いに言い聞かせるように、名前を案じる不安を拭い合う。敵側の人さらいの手に落ちたとは思いもせず、ハーマイオニーはテントがバッグに入ってると考えもつかないハリーを無視して、保護呪文を張り続けた。