Deathly Hallows(Part 1)-22



二人は姿をくらました先で、ハリーはスニッチの"肉の記憶"の真相に、ハーマイオニーは謎めいたシンボルに、それぞれが辿り着いた。互いのどれも答えそのものには辿り着けないまま、訪れるべきはゴドリックの谷だと決めたその頃、人さらいの一行は彼らの元居た川べりに訪れていた。

「ハハ!見てごらん 妖精様よ…」
「……」
「お友達のじゃなかったかい?…」

木にくくられたスカーフは、ハーマイオニーのものだと、名前にも分かった。鎖を離し、足取り軽く木に近づくと、スカーフに意気揚々と手を掛けた。潮時を察して、連中には決まって黙りこくっていた名前は静かに切り出した。

「ハリー達と私をまとめて差し出すつもりだったのね」

真剣な名前を嘲笑うように、仲間らも笑い声をあげる。スカビオールは木からスカーフを解きながら、ひと際名前を蔑んだ。

「その通りさ! ほかに気付いたことは!?」

「そうね、…この指が鳴らせなければ無能だと、勘違いしていることくらい?」
「……」

奪った杖を確かにポケットに刺している、スカビオールの表情から笑みが消える。名前はベルトに巻かれた両手を、開いて見せる。ハーマイオニーのスカーフを自分に巻いていた手を止め、よせ と呟いた。

「やめろ …! ひっ捕らえろお前ら…! 早く!!」

汚れた頬をにんまり持ち上げて、開いた手をそのままに、名前は旧本部でのクリーチャーのように、指も鳴らさず姿をくらました。駆け込んだ一番近くに居た敵は、標的がすり抜け派手に顔から転ぶ。スカビオールは絶望の声を上げ、数日ペラペラと名前の前で情報を喋り明かしてしまったことと、スカーフに近づくのに、鎖から手を離していたことを心から悔やんだ。

…――

夜の明かりの灯る、貝殻の家。扉に響いた物音にビル達夫婦の肩は跳ねたが、力なく開き見えた姿に驚いた。

「名前…!?」

驚きそのものの表情で、フラーが言葉を詰まらせながらすぐさま駆け寄る。ヘラ、と笑って名前は緊張を緩め、くんっと眠るように倒れ込んでしまった。座り込んでフラーが受け止め、ビルも屈んで寄り添い容態をうかがう。
どっと力の抜けた名前と三人、ドアのそばで身を寄せる。

「ハリーの、ところへ… それで……」
「そう、偉いわ 名前、ありがとう!心配したのよ…!」
「フレッドに知らせよう」
「 」

ガシ、と、様子からは想像できない力で、拘束のベルトもそのままの名前の手が、ビルの手を取った。フラーに身を預け、喉が枯れて声が出せずとも、"だめ"と低く大きな声で制された気分だった。弱く笑って、首を振る。

「…だめ、…お願い 。私はまだ…」
「…」

「……いいわ、名前。今は休んで」
「まだ ハリーを…」
「しー、おやすみ…。大丈夫よ」

作戦の夜 着替えるフラーから下着を受け取ったときと同じくらい、ビルは戸惑った。今すぐ知らせそうなビルをフラーは目で止めて、目を瞑ってしまった名前に頬を寄せ、子供を寝かしつけるように軽く揺らして髪を撫でた。抱きとめて捲くれた大きなコートの下は、ひどく汚れた、結婚式のワンピースのままだ。微笑むフラーの頬に、涙が伝う。

「フラー。…」
「こんなにボロボロで… 危険な中、真っ先にここを選んでくれたのね。…今はただ休ませましょう」

名前に施された酷い拘束に添えていた手を、フラーの頬にやり涙を拭う。ビルは名前が願った通り、騎士団の皆へ伝えることはしなかったが、気を落として案じていたモリーには、妻の目を盗んででも伝えてしまいたかった。

名前は久方ぶりにベッドという場所に、身を沈める。安心に包まれて眠る中でも、三人の安否が気になる心地は、意識を飛ばすまで消えることはなかった。

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