Deathly Hallows(Part 1)-26



人さらいたちが杖から繰り出した、名前の手の拘束に使われていた同じ鎖が ロンの体を捕らえる。なんとか逃げ切りたかったが少しの間で囲まれてしまい、機転をきかせたハーマイオニーは、咄嗟にハリーの顔面めがけて魔法を放った。

「う゛っ!!? ――」

倒れ込んだ拍子、またも帝王の声が頭の中を占領する。流れゆく景色は、監獄のグリンデルバルドの元を訪れ、在処を聞き出し、ニワトコの杖を手に入れる目前の帝王の姿を映し出す。

ハーマイオニーにメガネを取られ、魔法によって顔をみるみる腫らしながら、短く彼女の耳にも入れたが、ほどなくして追いついた人さらいたちに全員拘束されてしまった。

…――

"フラー またすぐ会えるよね"
"当然よ ここが隠れ家なのだから、きっとそうして"

まだこちらは夕焼けが辺り一面を赤く染める。貝殻の家を遠巻きに見下ろすここは、美しい建物の全体も、ムーディにならって杖を構えた岩陰もよく見える。

「……」

名前はフラーの優しい声を思い返しながら、しばらく家の温かい灯りを眺めて歩き出した。ここからハリーの元を目指すべく計画立てるには、助けを求めた二人のそばをまずは離れなければ、どうにも危機感が鈍って仕方がなかった。

「ひとつも簡単ではありません。 心の奥底は、意思とも異なる」
「……」

まさか魔法が去ろうとしているのではと、自然とドビーの話を思い返し恐ろしい憶測が思い浮かぶ。
戦いが終わるまで、きっと離れずに居てくれなければ。そのためにはハリーを守ることに専念する必要があった。
もっと、もっと 貝殻の家を離れようと、 名前は遠くの浜に出るまで、足を進めた。

…――

ハーマイオニーの魔法を喰らい"醜男"と化けられたハリーも、ハーマイオニーも、人さらいには咄嗟に偽名を答えた。スカビオールは以前感じ取った匂いがハーマイオニーから漂わないか、入念に確認してから、杖を構えてハリーのほうへ歩み寄った。

「妖精さんのことは? 両手を鎖でも皮でも拘束して痛めつけていたというのに、俺たちがまんまと逃がした、お友達の妖精さんはいっしょじゃないのか…?」
「 …絵本の話?」
「……」

動揺させようと尋問するスカビオールを、ハリーは堪えて挑発して返す。スカビオールは不満そうにしたが杖でハリーの前髪をどけると、ニタと笑みを浮かべた。

「…今回も計画変更だ」
「……」
「魔法省には連れて行かねぇ」


真っ暗な中に佇むのは帝王やデスイーター達の拠点とされているマルフォイの館。人さらい連中に捉えられ成す術もないまま、門の前までやってきた。スカビオールは門にハリーを押し付けるようにして、その奥によく見えるように、少し歪んでもハリーのそれに似ている、雷の傷と疑わしきそれを示した。

「  ドラコを  お呼び  …」

門を介したハリーの目の前のベラトリックスが、静かに、静かに、ハリーの額を凝視したまま、そう呟いた。

足を踏み入れた館内はさらに暗く、恐怖そのものが住み着いているような空気を張り詰めさせている。ロンとハーマイオニーは人さらいたちが拘束したまま、ハリーはベラトリックスが荒々しく引っ掴んでおり、痛がる声を無視して、嬉々としてドラコによく見せた。
部屋の隅にはデスイーターが一人。スカビオールと少し話したきり、口も挟まず、壁に体を預け、腕を組んで成り行きを見ている。

「どう!? ……」

「…… 分かりません」
「ドラコ よく見るのだ…!我々が帝王にポッターを差し出せば、すべて許され元の地位を取り戻せる…」
「捕まえたのは俺たちだ。忘れちゃ困るぜ」

ドラコの首を掴んでたのを訂正するように優しく撫でつけながら、耳打ちするルシウスにスカビオールは抜かりなく反論する。逆鱗に触れたように"よくもそんな口を…"と怒鳴りかけるルシウスに、妻は駆け寄り制止する。

近くでもっと見るようハリーを跪かせ、小さい子を連れるようにベラトリックスがドラコの手を引く。

「遠慮するな…近くに寄れ…! ポッターでない者を差し出せばあの方に殺されてしまう…確かめねば」
「……… 顔の腫れは」
「そうだ! 何があった?」

状況を声高らかに人さらい一行に問うも、彼らも"どうした 醜男?"と聞いたように、何も知らなかった。難を逃れたかったが、ベラトリックスには"蜂刺しの呪い"ではと、あっさりと勘付かれてしまう。
その間もドラコは、ハリーに見えも、見えなくもあるその瞳を、何かを迷うようにじっと見つめ続けた。

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