Deathly Hallows(Part 1)-28



「…… 〜〜っ…」

名前が姿現しで辿り着いたのは、館の門の内側。似た姿がまるで母校と重なり現状を知らせているようで、とたんに、たまらないというように息を吸い込み感情を抑え込む。
ハリーを念じたのに、心がフレッド達を求めている。
一度、ぶん!と首を振って名前は、敵地で緊張を緩めないようもう一度集中した。

……――

盗られていたスニッチが、気絶させられ伸びたペティグリューのポケットから軽快に出て、ハリーの元へ舞い戻る。ドビーのおかげで牢屋を出られたハリーとロンは息を潜め、広間に残したハーマイオニーのほうを目指す。
ベラトリックスのもとに残された間響き続けたハーマイオニーの悲鳴は、あまりに悲痛で耳を塞ぎたくなるものだった。叫び果てたようなハーマイオニーの腕には"穢れた血"と、掘られた傷で書かれておりスッと血が伝う。
傍ら、ベラトリックスは今は、グリップフックに迫り深刻に問い続ける。
蜂刺しの呪いがだいぶ失せてしまったハリーが、スニッチに気付き掴むと、ポケットへしまった。

「もう一度だけ聞くよゴブリン よく考えてから答えるんだね。…誰が私の金庫に入った!?誰が盗んだ…!誰が あの剣を盗んだ!」
「…最後に見たときは金庫にあった」
「じゃあ剣が歩いて出て行った??」
「グリンゴッツは安全な場所だ」
「――ウソだ!!」

頬に鋭利に、ベラトリックスのナイフが走る。これで済んで運がよかったなと低く呟き、彼女はグリップフックに迫るのをやめた。ハーマイオニーの始末を、彼女はもう決めている。見ていられず、"やめろ…!"と呟き、ロンは隠れるのをやめ走り出した。

「"エクスペリアームス"!!」

咄嗟に杖を取ろうとするルシウスを、間髪入れず攻撃するハリー。部屋の隅のデスイーターは、ハリー達が飛び出したとて特に顔色すら変えなった。
迎え撃つはドラコと、母ナルシッサ。刹那、ベラトリックスの制止の声が響き渡る。

「おやめ!! …このでくのぼうが…少しは気を利かせて見せろ」
「出る幕じゃない」

ハーマイオニーを抑え込み、のけぞらせた喉を今にも搔っ切ろうと、ニコニコとナイフを構えるベラトリックス。隅のデスイーターを一喝して、ハリー達へ杖を捨てるよう言い渡した。ロンと共に身動きが取れず素直に杖を離し、ドラコに拾い奪われた攻撃をやめた頃、ハリーの顔の腫れはどこかしこも引いている。

「おやぁ?誰かと思えば…ハリー・ポッターだ…!」
「っ……――」

楽し気な声をわざとハーマイオニーの耳音で聞かせ、恐怖を煽る。皆の耳にも届く、ベラトリックスの不気味な、這うような囁き声。

「元通りの顔になった…! 闇の帝王にお見せできる」
「……」

お呼びしろ。
唾をのむハリーににっこり笑って聞かせるも、ドラコは腕の印を出そうとしなかった。空間にしばし混乱が漂う。
痺れを切らすようにずいとルシウスが出る間も、ドラコは俯き戸惑い続けた。

勝ち誇るように踏み進み、袖から印を出し腕をかざした。緊張がピークに達した頃、なにやら異音が、いつから在ったのか 空間に控えめに居座っていた。

"キィ…  キィ、"

「…… ―― ?」

"キュッキュッキュッ…"

はっと天井の大きなシャンデリアを見上げるベラトリックス。そこにはドビーがしがみついており、せっせとネジを緩めていた。よいしょ、と外されたそれは、真っ逆さまベラトリックスの脳天へ向かって落ちゆく。

「ア゛ーーーッッ!!?」

ーバリバリバリィィ…ン !!ー

咄嗟に腕を離れたハーマイオニーが一目散に駆け、ロンの胸に飛び込んだ。避けてよろめいたドラコ目掛け、ハリーは杖を奪い返す。もはや泣きそうなドラコが杖を離してしまったとき、黙ってしたデスイーターは呆れるように壁から身を離し、ハリーに向けて強靭な攻撃を放った。

―バシュゥッ !―

― パチン!! ―

身構えるハリーの盾になるように、飛び込んで姿現しをした名前が、現れる瞬間指を鳴らし、デスイーターの攻撃をはじいた。

「名前!」「……」

安堵の笑みを見せるハリーの横の名前も、名前を目に入れたデスイーターも、表情を一変させる。彼は以前名前の手を負傷させた張本人で、今しがた繰り出したその攻撃は、名前の杖から放たれたものだった。
スカビオールが奪ったその名前の杖は、"贈り物"だと彼の手に渡っていたのだった。

"あぁ ごきげんよう.." と、杖を見せびらかすように、首をかしげながら挨拶してみせる。先ほどまでと打って変わって楽しそうな様子のデスイーター。名前はハリーを庇いながら、血の気を引かせた。

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