Deathly Hallows(Part 2)-1
- ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2 -
"自由なしもべ妖精ドビー、ここに眠る"
貝の家のそばの小高い丘。浜の砂が続くその野原に、ドビーの墓石はハリーや皆の手によって立派に建てられ、安らかに見送られた。優しい潮風が、吊るされた装飾を美しく鳴らす。
水平線を眺めて考え込むハリー。テーブルにはロンとハーマイオニーが、まだ表情を曇らせたまま座っている。名前はフラーにこと付けられ、オリバンダーの空いた食器を受け取ろうと彼をたずねていた。
隅の椅子に身を預ける彼の傍らの、ほとんど手が付けられていない食事を"下げていい"と微笑まられ、名前は少し戸惑っていた。ふと、調子も変えずに投げかけられる。
「君は杖をそう使わない様子だったが……見当たらんようだね?」
「……奪われてしまいました」
「魔法は?」
名前は片手間に聞くべきでないと、ベッドに腰掛けてやや慎重になって答えた。魔法はそう差し支えなく使えていると。
名前は内心、奪われて以降も、それより前も、ドビーの話を聞いてからというもの、まるで賭ける気持ちで魔法を使っていた。そうだというのに杖まで奪われては、更にこの魔法が去りやすい環境を作ってしまったのではないかと案じていた。奪った杖を掲げ、勝ち誇ったように笑うあのデスイーターの表情が、名前の頭にはびこる。
「いつ魔法が消えるか以外は、何も不安がる必要はありませんよ」
「当然です!"リーバー(去る者)"なのだから。こうやって話している間かも、寝ている間かも、帝王と対峙している瞬間かも。自由に去るから誰にも分かりません!」
「そうか、それでは…今は別の者を選んだやもしれんと」
「…"選んだ"?」
―カタン、 ―
ドアから聞こえた音に振り返ると、なかなか戻らないのを察してか、フラーが代わりに皿を下げに来た。見え隠れするドアの向こうには、こちらをうかがうような三人の影もあった。部屋を出るフラーと代わるように、彼らも入って来た。弱りきったオリバンダーと、彼のほうを向いていた、ベッドに腰掛け振り返る名前を目に入れる。
「何か?」
「オリバンダーさん お聞きしたいことが…」
「何なりと、ハリー」
振り返った名前の視線はすぐにハリーの手元の、2本の杖まで降りた。
杖を見てほしいと、ベラトリックスのものから順にオリバンダーへ渡すハリー。歩み寄り、ベッドの、名前の隣に腰掛けた。ロンとハーマイオニーは、グリップフックをたずねたときもそうしたように、ドアのそばに佇んでいる。
材質やしなり、長さ、持ち主まで静かに答え、オリバンダーは、ドラコのもの"だった"杖をハリーに返しつつ、杖の忠誠心までも話してみせた。ハリーは返される杖を受け取りつつ投げかける。彼の手に返された杖へ、名前も隣から目を落とした。
「…杖が感情を持ってるような言い方ですね?杖が考えるような…」
オリバンダーは静かに笑みを浮かべ、名前にもよく聞くように人差し指を少し立てて知らせると、ゆっくりと改まった。
「杖が、魔法使いを選ぶのじゃ」
「、………」
杖の術を学んだ者にとっては明白なこと。オリバンダーの言葉に名前はなんだか眩暈を覚えた。杖が本当に感情があるとすれば、せっかく見込んだ魔法使いが、ハリーがやって来て早々、宿った魔法の習得に励んでどう感じただろうか。忠誠心など、とっくにあのデスイーターに変わってしまっているだろうか。このドラコの杖のように。…
「"死の秘宝"をご存知ですか?」
ハリーの手の杖を見て複雑な感情を抱いている名前の思考を、ハリーの言葉が遮ったので、彼とオリバンダーへ再び視線を戻す。その質問は、明らかにオリバンダーの表情を深刻で気難しいものに変化させた。