Deathly Hallows(Part 2)-5
「待って!悪者じゃないの…!」
「グゥウウウゥ……」
「………」
炎がすぐそばでないにも関わらず、名前の頬を熱くし驚かせた。思わず手をやったそばに、深くえぐれ、治るよりも先に鎖がさらに深くえぐり、何重にも重なったのであろう傷が在る。
「痛む?」
「……、…、」
「、」
―ガラン、… ガラガラ……―
閉じられた金庫の中から、遠巻きに金属のような、椀が跳ねるような衝突音が何重にも響き名前はそちらを向く。その間もドラゴンは喉の奥で唸らせる息だけあげて、鼻先を名前へ向けたまま、まるで落ち着いてしまっている。
奥からの音が落ち着いて再びドラゴンを振り返った。信じられないくらい大きな体の相手だが、名前の中では不思議と恐ろしさよりも通じ合っている確信が勝っていた。覗く牙よりも、大きな瞳よりも、動くたびにジャラ、と鳴る鎖がよっぽど憎たらしく、悲しい。
「一緒に逃げない?ここが家じゃないでしょう?」
「……」
「山中に住んでるはずよ」
「…グゥウゥー…」
「手を組もうよ?ハリー達もきっと賛せ…―」
―ガラガラガラガラ!!!!―
「 ―!」
突如金庫の扉が開き、くぐもっていた物音は突如鮮明になった。剣と引き換えに分霊箱のカップを手に入れたハリー達だったが、出るのは手伝うと言っていないとグリップフックに裏をかかれ、双子の呪いで増え続ける金品に身動きを奪われていた。
鳴り物のほうへ急ぐグリップフックと連れらるボグロッドを、理解できていない名前が目で追う。
「、みんなはどうしたの」
「下僕なら自分で探し出せ」
「名前!!」
「! ―――わぁっ!?」
―カラカラカラ!!!―
けたたましい鳴り物にドラゴンが苦しむように首を縮める。瞬間、ふと後方を振り向き翼を少し広げると、名前の身をグッと押しやり、まるで隠すように自分の後方へ走らせた。
「ぐっ!!?」
壁まで下がらせられ、痛くない程度に押し付けられた翼の骨格に手をやりながらハリーの声のほうを見ると、金品から這い出ようともがいている。
ドラゴンは鳴り物の音を堪えながらも洞窟の奥を警戒しており、警報を聞いて駆けつける大勢の警備から名前を隠していた。
泥棒だ!と叫ぶグリップフックに名前は合点がいき、悔しそうにしかめ、剣を片手にその場を足早に去るグリップフックと、ハリー達を交互に見る。
埒が明かないとドラゴンの骨格にしがみつき、守ってくれた彼から抜け出そうとその身をよじ登った。
駆け付けた三人がドラゴンへ登る名前を目に入れ状況把握に困っているところで、警備の手も届きだす。ドラゴンの背にしがみついたまま、名前は三人に向かって叫ぶ。
「逃げられちゃった!」
「まだボグロッドが居る…!」
「……」
ドラゴンは目の前でにこにこ立ち尽くすボグロッドにふと留まるが、自分に掴まっている名前が何も言わないのを見届けたように息を吸い込み、思い切りボグロッドへ炎を吐いた。
―ゴォオオオオオォォ…!!―
名前と、二人は目を見開いたまま絶句、ロンだけが"…あらまぁ"と漏らした。出遅れた警備の大勢の杖から、ハリーらを目掛けて攻撃が繰り出される。
―バシュ!― ―バシュ!!―
「やめて!!」
「グォオオォ!!」
名前の制止の声とドラゴンの声が響くのを耳にしつつ、ハリー達は物陰に隠れ攻撃をかわす。ハーマイオニーはドラゴンにしがみつく名前を思い浮かべては払い消しながら、何か手段を考えるよう二人へ叫ぶ。
「君が得意だろ!?」
「…、あるけど無謀なの!!」
―"レダクト"!―
通路の柵の一部を、ハーマイオニーが呪文で破壊する。するとそこから、攻撃をかわして走り抜けるとドラゴンの鋭い背びれの、名前のすぐそばへしがみつき、物陰に佇んだまま目を疑う二人へ叫んだ。
「早く乗って!!」
「ハーマイオニー、!、実は相談が…!」
「"レラシオ"!!」
―ガシャンッ!!―
「…! ありがとう!!?」
ハリーとロンが飛び乗ったところで、ドラゴンの繋がれた鎖目掛けてハーマイオニーは解放の呪文を唱える。名前は驚愕し、目を輝かせた。場違いな大はしゃぎの笑顔を、ドラゴンの大きな瞳へ向ける。ドラゴンはというと怒りの瞳を周囲の全員へ向け、自由になった手足で洞窟を揺らし炎を吐き続ける。
「よかったね!!?自由の身よ!!」
「ゴォォオオオォォ!!!」
「ちょっと落ち着いて!!」
「私!!?」
「ッ、両方!!」
しがみついてやけくそのように叫ぶロン。落ち着いてなどいられないと、名前はドラゴンへ逃げるよう促す。耳に入れたように、ドラゴンは上空を見上げ、星のように小さい出口に的を絞った。
岩場に力強く爪を立てるや否や、続けてこちらへ向かうトロッコから攻撃魔法が飛ぶ。身を縮めて即座に名前は指を鳴らした。
―パチン!!―
― ぎゃりりり!! ―
トロッコの車輪の片方を壊し火花を散らせる。加勢するようにドラゴンは声を上げ線路を丸ごと鷲掴み、バキリと折る。それに沿って警備を複数乗せたトロッコはさらに深い洞窟の底へ落ちていった。
「やれぇーっ!!ドラゴーーン!!!」
目もくれず上だけに目を据え、魔法大会のフレッドよろしく叫ぶ名前を見上げて、ロンは必死な狭間に思わず笑う。
ドラゴンは翼を懸命に動かし、地上一階のその遠い遠い星を目指し飛び立った。