Deathly Hallows(Part 2)-6
元来た一階に巨大な頭を出し、静寂を激しく破壊する。柵を大破させると、従業員のゴブリン達は突如現れた大きなドラゴンに慌てふためき、足早に逃げた。
ハリー達四人はドラゴンの背に、力いっぱい掴まって、乗り心地がいいとは言えないその場で耐え抜く。
周囲を威嚇し、炎を吐くと、更に上を目指そうと頭を持ち上げ、シャンデリアに激突しぶち壊す。
落下するシャンデリアの破片をよけて、衝撃に耐え、名前以外は限界の近い表情を見せる。
「やだ!!足元に気を付けて!!」
「名前もね…!?」
屋根を破壊すると突如無くなった足場にふらついたドラゴンの肌に手をやって心配する名前と、力を緩めないまま呟くハリー。なんとかその場に落ち着き、暴れ回って上がった息を、ごうごうと喉を鳴らしながらドラゴンが整える。大きな穴をあけた銀行から、騒音が一度遠のく。
「疲れたの?…飛ぶのは少し休んでからにする?」
「ねぇ名前!ごめんなさい!」
「何?…―」
「"レダクト"!」
落ち着いてしまったドラゴンの尻尾めがけて、ハーマイオニーが振り向きざまに魔法を繰り出し鞭を撃つ。痛いと声を上げてすぐ"掴まれ!"とハリーが叫ぶ。名前も咄嗟にドラゴンにしがみつくと、彼は数歩、街を破壊しながら飛び立った。
翼を数回はためかせれば、すぐに巨体は安定した。背に掴まる四人の髪や体を、強風が吹き抜ける。
「最高!」
「すごいや!ナイス・アイデア!」
ロンが名前に続いて場違いな歓喜の声をあげ、いまだ興奮の収まらない名前と笑顔を交わした。
…――
視線の高さを、自由な雲たちが通り過ぎる。しばらくにこにこと眺めていたが、海面や岸はやがて次第に近まりだした。
「下がってる!」
程よく干上がった場所を見つけて、ロンとハリーが戸惑うハーマイオニーを急かした。
「飛び込め!」
「いつ!?」
「今だ!」
「待って!ちゃんとお礼を、!」
三人は名前をおいて、思い切ってその背を離れる。名前は指の音を鎖に向かって放ち、すべての枷をこのドラゴンから外して捨てた。ドボン!と三つの波の音が聞こえる間も、名前はドラゴンを撫でよく言い聞かせた。
「ありがとう、あなたは本当に素晴らしいドラゴンね」
「グゥウウウゥ、」
「静かに暮らしてほしいけど、また会えるといいな」
応えるような、ゆっくりとしたまばたきを見せるドラゴン。ひとつ笑みを返し、向こう岸に到達してしまいそうな寸でのところで、名前も同じくその背を離れた。
すり抜ける泡や波に紛れ、水面を目指すまでの間、ハリーの意識が断片的に帝王の姿をとらえた。少しの間だったがその情報量は膨大で、ほぼ一斉に波から顔を出した二人へ話すのを急いだ。濡れて重くなった体を引きずり、水面を離れる。
「"あの人"は気付いてる…!僕らが金庫に入ったことも、分霊箱を追ってることも」
「どうして…!」
「見たんだ」
「また心の中に!?ダメよ…!」
「思い通りにコントロールできない。名前にも聞くといいさ」
「名前…!?」
その辺の丘を目指しつつ、ハーマイオニーが戸惑ったところで、少し先から姿現しの音がした。水面に打ちつける寸前、同じ丘の近くを目指した名前が起こした音だった。
「奴の様子は!?」
「怒ってて…怯えてた。分霊箱が全滅したら死ぬからだ。全力で僕らを止めに来る…!」
一つはホグワーツにあり、レイブンクローが関係ある。しゃがんだハーマイオニーは薬品や洋服を手早く出しつつ、ハリーの言葉にひっかかる。
今すぐ行くべきだと急ぐハリーと、計画を立てないとと制止するハーマイオニー。作戦はさておき、ハニーデュークスの秘密通路を使うことで落ち着いた。名前達に教わった通路を、と、着替える片手間に、こちらへ駆け寄る名前をハリーは振り返った。
「あいつ変だった、…以前はあいつの考えがハッキリ読めた、でも今はバラバラで…」
「分霊箱を壊され死にかけてる?名前もあれから乗っ取られてなんかないんじゃないか?」
「、"あの人"のこと?…そうね、あのクリスマスにしか…、」
「弱ってるんだよ」
合流してすぐで状況が読めないまま、ロンの言葉に応える名前。指を鳴らすと、三人からパッとしぶきがはじけて髪や肌から湿りが消えた。凍えて小さくなっていたハーマイオニーがパッと顔を上げたので名前が小さく笑みを返すあいだ、ハリーが"いや"と、深刻に続けた。
「手負いの獣のようで、…前よりも危険だ」
「……」
ハリーの様子に、皆思わず押し黙る。ハリーのみならず、この世界全体に迫りくる危機を感じ取り、名前は指先にかすかな震えを覚えはたと目を落として、両手を握り合わせて誤魔化した。
ハリーが断片でとらえたとおり、帝王は何人も死人の倒れる銀行を、その足を血塗らせて静かに歩いていた。
ー全軍でやつを探し出せー
ーナギニ 俺様のそばを離れるなー
そこには、大きな傷を顔に付け息絶える、グリップフックの姿も。誰にも渡さないというようにその手に握られているグリフィンドールの剣は、ゆったりと呼吸をするようにぼんやり消えると、その手から静かに消えてしまった。