Deathly Hallows(Part 2)-7
雪の積もる、暗闇のホグズミード。手を取り合った四人が姿現しをすると、ただちに警報がやかましく響いた。
侵入者だ! 誰の影もなかった周辺に何人もの魔法使いが姿を見せ、足早にこちらを目指す。無数に雪除けをかぶせられたテーブルの脚のそばで、四人は息を潜める。
「納屋を探せ!」
「…引き付ける隙に行って」
「名前!だめよ…!」
「、 出来なそう?」
少し笑う名前に、思わず"まさか"と返したのはロンだったので、ハーマイオニーはバッと隣を振り向いたが、ハーマイオニーもハリーも同じ意見だった。あの彼らと手を組んでいた名前が、閲覧禁止の棚を自由に物色する名前が、簡単に掴まるはずなんてなかった。
―ギュル!―
追手の目に留まらない最良のタイミングで、名前は姿をくらました。しばらくすると、そちらへ姿を現したらしい、遠巻きから警報が響き、ハリー達へだんだん近づいていた数人も、バッと向きを変え走り去った。
「ポッターァァ!!」
「「……」」
この一帯を占拠する彼らもまた、狙いがハリーである。三人は少し凍てついた表情を合わせると、周囲をうかがいその場を離れた。
― ギュルッ!!―
名前は戸惑った。追手を逃れ、咄嗟に近場に姿くらましをしたがこのそばのそびえる格子も、狭い小道も見覚えがない。
「何している、こっちだ」
「!!!!!」
格子の向こう、暗闇から突然放たれた男の声に、名前は何歩も向きを変えて驚いた。目をこらしても姿が見えない。その声はやがて呆れたように溜息をはいた。
「こっちだ、妖精。もう一度、門のこちら側に姿くらましをしろ」
「……」
ついてこいと言うように、足音は焦りもしない様子で遠のいた。暗闇の中、敵ではなさそうだが信じていいかが分からないその声に、名前は迷ったがまた敵に追いつかれては元も子もないと、声に従うべく決心した。
…――
別の道順で同じ小道に辿り着いた三人は、その格子に行く手を阻まれる。近付く追手の荒々しい声。すると門のすぐ傍ら、扉の開く音の後に、男の声が掛けられた。
「入れ ポッター!」
三人はその男を見ると、暗闇の中でも分かる、ダンブルドアと瓜二つの背格好や表情に、心底驚いた。
細い階段を降り立った先、灯りのともる隠れ家のようなバーに続く一室の隅に、先に匿われた名前が居たので、降りてきた順に、三人は安堵の表情を見せた。
壁に駆けられた鏡にハリーの顔。シリウスに持たされた、ハリーの持つ鏡の破片には壁の鏡を覗き込むハーマイオニーがうつり、互いをうつしているのかと結びつこうとした矢先、怒りのこもった声が響いた。
「なぜノコノコやってきた」
「!」
「危険だと分からんのか!」
「先生の弟のアバーフォース?…」
鏡から見守り、ドビーをハリーの元へ送り助けてくれたのも彼だとハリーは次々結びつきだした。
少し乱暴に出された食べ物やバタービールに、ハーマイオニーとロンが手を伸ばすのを、絵画のそばでハリーと名前は眺めた。
騎士団から連絡は?騎士団は終わりだ。そちらでの会話に、名前がピクと反応し、アバーフォースを注視した。
「"例のあの人"の勝ちさ。否定するのはごまかしだ」
「ごまかしでなく否定するわ」
「、…」
「ホグワーツに行きたい」
少し声に力のこもった名前を、アバーフォースが振り返ると、その隣のハリーがすかさず口を挟んだ。ハリーもまた、真っすぐに彼を見つめている。アバーフォースは名前から視線を変え、半ば呆れるような態度を見せた。
「託された仕事が」
「兄に託された?いい仕事か?簡単か?」
その様が、もう答えを告げている。名前にもまるで笑われているような感覚は伝わるが、そうされたとてハリーに寄り添い続ける。
「分霊箱を追ってるんです。それが学校にある。力を貸して…―」
「兄が君に課したのは自殺行為の任務だ。自分を大事にして長生きしろ」
「先生は僕を信じた」
「なぜ兄を信じる?」
数歩分も挟んで、二人は互いの言葉を覆い合いながら続ける。傍らで食べ続ける二人にも、少しだけ戸惑いが見え始める。
「兄の話が信用できると?兄が一言でも俺のことを話したか?妹のことは?」
「、それは」
「兄は君に隠し事を」
「…、僕は信じる!」
「青臭い答えだ!」
ハリーが込めたのと同じように、アバーフォースもまた言葉に力を籠める。手のグラスに口を付けないまま、真剣にハリーに視線を返し続け、歩み寄る。
「何も教えぬ男を信じて分霊箱を追う?ウソだ!」
「……」
「俺にウソをつくのはいいが自分を欺くのは愚か者だ。…君は愚か者には見えんぞ、ハリー・ポッター。もう一度聞こう、理由はなんだ」
名前はすごむアバーフォースのその感覚に、貝の家でのムーディを思い返し、ふと目を潤ませる。
彼には事情が絡んでいるにせよ、その言葉には、こちらをみすみす死なせない思いが、確かに宿っている。
だけど
「… 兄弟の事情に興味はない」
「………」
「戦いを捨てるのも自由だ。でも僕は先生を信じる」
もう一度、ハリーは城へ入ると告げる。名前も、ハリーの言葉にひとつの異論もないため、隣で同様にアバーフォースへ目を向ける。
アバーフォースは二人を見届けるように眺めて黙った後、絵画の妹へ向け、落とした声で"頼んだよ"と告げた。
絵画のアリアナをも兄は失ったと、妹の話を少しして、アバーフォースはその場を外した。
「2度も救われたわ。鏡で見守ってた。…戦いを捨ててないわ」
アバーフォースまで聞こえないよう、ハーマイオニーはハリーに耳打ちする。それは皆にも、アバーフォースの言いようで十分伝わっていた。
「…! 戻って来た。…誰か一緒だ」
絵画のアリアナが、雄大な自然に続く小道を、先ほど歩いて行ってしまった通りに戻って来た。こちらへ近付く彼女の後ろには、誰だかもう一人影が見える。
絵はやがて元の通りアリアナの姿のみになると、ゆっくりとドアのように額縁ごと開いて行った。壁にぽっかりと開いた秘密通路からやって来たのは、もうずいぶん久しいネビルであった。