Deathly Hallows(Part 2)-10



帝王に従うべく、捕らえるよう促すスリザリン生の声に、騎士団の面々がためらうことなくハリーを庇い盾になる。マクゴナガルが尊ぶような表情をしている間に、フィルチが忙しなくやってきた。
場の空気が和らいだのを見計らって、名前は”大丈夫..”とフレッド支える腕に手をやり大きな手を握った。

「生徒がベッドから出てる!!」
「……――」
「生徒が廊下に!!」

「そうすべき時なのです大バカ者!」

マクゴナガルのフィルチへの叱責が飛び広間は一時凍る。小さく謝るフィルチを見届け、マクゴナガルは歩み寄り言い付けた。
スリザリン生たちの前に止まり、圧するように杖を向けた。

「ミスター・フィルチ いいところに来ました、頼みがあります。スリザリン生を大広間から出しなさい」
「どこへ連れて行けと?」
「地下牢へでも」

歓声に沸く生徒たち。歩き出す騎士団をよけつつ、フレッドの手を離させつつ、名前はマクゴナガルへ歩み寄るハリーの背中を追った。話終えたらしいハリーは皆を振り返り、"みんなを頼む"とネビルに託し、焦っていた。
分霊箱のヒントを求めレイブンクロー寮へ行くのであろう。名前は重々承知で呼び止めた。なぜ今伝えなければという気持ちに駆られたのか、名前は今言わなければならない気がした。迫りくる戦いに備え、魔法が消えないようにか、どうしてだか、とにかく今でなくてはいけなかった。

「ハリー、」
「、…」
「謝らなきゃいけないことが。…作戦の夜、私はあなたよりジョージを気に掛けたの」
「……そうだったね」
「隠れ家でも一度あなたを忘れそうに… ごめんなさい」

行き交う生徒の焦る声を受けながら、ハリーは真剣に見つめ返し、"僕も"と口を開いた。

「僕も名前に謝らないといけないことが。…君を一度疑った」
「、…そうなの?」

名前の卒業後、得た情報の一部を器用に隠していないか、名前を疑ったことをハリーは詫びた。
緊張感が一度緩み、名前とハリーは少しの笑顔を交わす。

「今は?」
「信じてる。心から」
「私もよ。 …気を付けて」

互いの気持ちを確かめるように、互いの気持ちを深めるように、言葉を交わし終えて、二人は分かれた。扉へ駆けるハリーを振り返って、名前も気持ちを固め、戦いに備えた。
分霊箱を追うハリーに、連れ添いはしない。名前は、宿る魔法の示すまま、行先をもう決めていた。

…――

騎士団の皆は保護呪文で城を包むべく、一帯の配置につく。ネビルはシェーマスと共に、マクゴナガルの言い付け通り橋の爆破へ急ぐ。闇に飲みこまれる外を傍観するマクゴナガルに、フリットウィックは小さく呟く。

「"例のあの人"は止めきれない。ポッターと妖精が戻ったとて…―」
「彼らのために時間稼ぎはできます。…"ヴォルデモート"と名前でお呼びなさい…!どのみち殺しに来るのだから」

マクゴナガルの覚悟には、隣のモリーも思わず目を見張る。ふとマクゴナガルは城を振り返り、杖とその手を掲げた。

「"ピエルトータム・ロコモーター"!」

城の壁の装飾のようであった兵士の石像のすべてが、呪文によって動き出した。その場から飛び降りズシリと着地すると、隊列をなして城の橋を目指し、ずんずんと地を揺らしながらゆっくり行進した。

「ホグワーツが危険です!警備しなさい!学校への務めを果たすのです!!」

指揮するマクゴナガルは勇ましい表情を少女のように一変させ、一度使ってみたかった呪文だとモリーに耳打ちしたが、いよいよ迫るホグワーツや家族の危機に呆然としていたモリーは返事もできなかった。

空へ放たれる無数の保護呪文は、ベールを作り上げひとつになりながらゆっくりと城を包みこむ。ゆらめく優しい光は、城を無数に取り囲む敵陣から放たれた攻撃を受け、火花を散らして欠けるようにまぶしく光り衝撃を耐えた。
衝撃音が響くなか、塔の上、名前も打ち合わされた配置につこうとしつつ、意を決すとフレッドジョージのほうへ足を向けた。
追い越した、佇むルーピンとキングズリーは言葉を交わしていた。

「”勝負は数の多さではなく決意の固さで決まる"」
「誰の言葉だ?」
「…私だよ」

「フレッド、ジョージ」
「「!」」

外へ差し掛かる手前、二人は名前の声に振り返った。
名前は笑いもできず二人のもとへ歩み寄ると、片手ずつ二人の手を取った。愛おしい二人の手が握り返してくれる心地が、名前の鼻をツンとさせる。

「分かってる。名前」

うつむいた名前の頭上から、ジョージの優しい声が降ろされる。堪えていた嗚咽を漏らし、涙をぽたぽたと地面に落としていると、フレッドが名前の名を呼んだ。再会を喜び幸せに満ちた心がもう今やずいぶん昔のことのようだった。今は悲しみに、胸を裂かれる辛さに溢れている。
フレッドが屈み、名前の肩を包んで見つめる。顔を上げて名前は、潤む瞳でフレッドを見つめ返す。大好きなフレッド。
ずっと一緒に居たい。

「ずっと一緒に居よう」
「…、……、…」

名前が発したかった言葉は、フレッドから発された。うん、と小さく返すと二人は名前から手を離す。
肩を震わせて、呼吸を整えると、意を決すように外へ向け走りだす。二人の間を走り抜け夜風が肌を差す間際、窓辺の城壁の直前で指の音と共に、名前は姿をくらました。

君が心に決めた場所へ立ち向かうこと。俺も相棒も分かっているよ。
約束は限りなく希望が薄く、まるで別れの言葉であった。それほど絶望的な状況だった。名前が姿をくらましたほうへ、溜めた涙もそのままに、二人はゆっくり足を進め空を見上げる。攻撃を受け激しい光を放つ空一帯を見上げたまま、ジョージは口を開いた。

「行けるか?フレッド」
「ああ。」
「…俺もだ」

心を決めたように笑みを交わす二人。
希望は薄くともずっと一緒に居られる未来を手に入れたい。約束を必ず守り遂げたい。フレッドの脳裏に悲しみにぬれる名前の表情と、首元に光るあのネックレスが、こびりついた。


―ギュル!―

「うわぁぁ…!! あああぁぁ…!!!!」

音を立て城の庭先に姿を現した名前は、足を止めない。ひと気のない外で攻撃魔法の光を受けながら、小さな子供のようにい声を上げて泣く。
行く先には、橋の上に列をなした城の石像の兵士たち。海に面したその橋の先、名前は泣きじゃくりながら、兵士たちの先頭を目指した。

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