Deathly Hallows(Part 2)-11



バジリスクの牙を求めるロンとハーマイオニーは、"ハリーが寝言で言っていた"と、ロンの蛇語で難なく秘密の部屋へ立ち入る。森に続く橋のほうでは、ネビルが無数の敵に対峙していた。保護呪文内に侵入した仲間が体を消滅させるのを見てビタと止まった敵陣を、ネビルは"来いよ!マヌケ!"と笑っておちょくった。

海に面すほうの橋は名前を先頭に石像の兵士たちが守る。橋の続く先、保護呪文の向こうに、手も足も出ない様子の無数の敵には、邪悪な顔付きの巨人族も数体見える。その数や無謀さに、肌寒さとは別の悪寒が走り少し震え出した両手を、名前は握り合わせる。

「ふぅ、……(ハリー)」

号泣して瞼のヒリつく両目を閉じれば、遠巻きの敵たちの凶悪な声に紛れて、橋のはるか下に打ちつける静かな波の音が耳に届く。

「私は、あなたを信じてる」

自然と震えの止まる両手。開けた目でその手を見た名前は安堵のような笑みを浮かべて、来うるときを待ってその両手を敵陣へ向けて掲げ、集中した。

骨だけになってしまったバジリスクから牙を抜き、ハッフルパフのカップの破壊に、ロンとハーマイオニーは成功。苦しむ帝王の感情は城の中のハリーにも行き渡り、帝王の感情を通じてハリーも成功を知る。

「……!

ウワァ゛ァ゛ァァーーー!!!」

怒りに任せたように、ヴォルデモートは杖の忠誠も無視して保護呪文へ向けて激しく強力な魔法を放った。衝撃風であたりはうごめき、空一帯の保護呪文はその攻撃に耐えきれず、溶け行く氷のようにじわじわと保護の向こうを映し出し穴を開け始めてしまった。
城の皆に、緊張が走る。
保護呪文に城で一番近いであろう、石像の兵士たちと見上げる名前の顔にも、海の水面のような波の影が落とされる。

ニワトコの杖の忠誠はそう容易くはヴォルデモートに誓われず、跳ね返されるような波に帝王は声を上げ手元を見やる。だが保護呪文は彼一人の手によって姿を一変させ、火炙りに遭わせられたように燃える欠片を漂わせながらゆっくりと崩壊していった。

敵陣の察知した表情は、ネビルのほうも、名前のほうも、全く同じ。
名前は掲げた両手をそのまま、敵陣を見やると、さらに集中を深めた。

「杖が、魔法使いを選ぶのじゃ」
「 (おまえを選んだのは  私よ) 」

"パチンッ"  ― パシ!!―


名前は鳴らした手で瞬時に奪い返した杖は、まるでその音で出現させたように名前の手に握られた。
壊れゆく保護呪文の向こう、敵陣の中に、杖が手元を離れて慌てているデスイーターが見て取れた。ポケットを抑え、まさかとこちらを見る屋敷で遭遇したぶりの彼へ、"あぁ ごきげんよう.."と、彼にされた通りに名前はして見せた。

「「「ワァァーーーーーー!!!」」」

威嚇するような大声を上げ走り迫る敵陣。
ネビルの居る橋のほうもまた同じ。ネビルは慌てて城を目指して逃げる間際、攻撃魔法をよけるのに体勢を崩しかけながら、仕掛けた蔦と爆薬目掛け魔法を放つ。橋が装置にそって爆破を繰り返し、敵の足場を奪い、一度に大勢の敵を谷底へ送った。
いっしょに落ちかけたネビルはぎりぎりのところで橋に掴まり、頭から血を流していたが、苦しむ表情で「大成功…!」と呟き、仲間のもとへよじ登った。

杖を奪い返した名前は、橋の先から迫る敵陣に目を見張る。無数の魔法使いと、援護する巨人族。面した海への集中を途切れさせず敵に目を見張ったまま、名前は杖を握り直すと全身の力を込め魔法を出し切るように勢いづけて、一帯を振り払うように、海の方から彼らへ向かって、両手を振り下ろした。

「ウァアアアァーーーー!!!」
「!!!」

名前に海が応え、大きな大きな波を作り上げ、更に姿を大きくしながら橋へ迫り向かう。別の城が突如出現したような、空ごと飲みこみそうな大波に皆青ざめて足を止める束の間、名前の魔法の通りに波は名前の一歩先から向こうを、橋ごと飲みこみ魔法使いや巨人の足取りを阻み、無数の悲鳴をあげさせて大きな一口で飲み込んでしまった。

列を乱さないまま敵へ立ち向かう石像の間を後退して抜けながら、名前は上空を見やる。敵は橋からだけでなく、体を煙に変えもちろん上空からも攻め入る。振り下ろされる攻撃魔法を屈んで避けながら、兵士たちの後ろまで駆け戻る。石像から欠けた破片が飛び散り、名前の頬や手をザクと切っていく。随分減らせたとはいえ敵の数は膨大で、攻撃は瞬く間に城のふもとまで到達する。

「中へ入って!隠れるのです!!」

火の手が上がり爆発音を轟かせる、一気に地獄と化した庭先。皆へ懸命に叫ぶマクゴナガルの声を後方に、名前も巨人や魔法使いの攻撃を阻み、生徒や城を守ろうと魔法を駆使する。上空から塔内に侵入したデスイーターと、騎士団の皆の戦う火花も、名前の居る庭先まで届き苦戦が容易にうかがえる。

混乱の渦の城内。ハリーは生徒達をかわしながら鉢合わせたジニーと、どちらからともなくキスをする。

「分かってる…!」

そう残してジニーは胸の痛みを堪え、走り去るハリーの背中を見つめる。別の場所、秘密の部屋を後にしたロンとハーマイオニーは、地図からハリーの姿を探す。

「ハリーが見つからない!夜中に図書館に行く名前じゃあるまいし…―」
「いたわ!ここよ」

ハーマイオニーが指してすぐ、壁に向かって立つハリーの足跡と名前は消えた。戸惑う間も、衝撃で城は揺れ砂埃を立てる。ロンは少し考えてハーマイオニーを見た。

「"必要の部屋"かも。地図には出ないって君が言った」

行こう!と駆けだすロンに呆気にとられつつ、"さすが"とだけ呟いてハーマイオニーも後を追った。
ハリーを探し必要の部屋を目指すのは、ゴイル達スリザリン生を携える、ドラコもまた同じだった。


…――

無人の必要の部屋。感じ取られる帝王の気配にハリーは意識を研ぎ澄ませば、レイブンクローの鷲を象った髪飾りは、煩雑なその部屋でもすぐに探し当てられた。胸を撫でおろすハリーの手は、"おやおや"と放たれたドラコの声に跳ねて髪飾りを離した。
仲間と杖をハリーへ向けて、杖を返すよう脅す。髪飾りの破壊を急いでいるハリーもまた、構っていられない反面、ドラコを逆撫でせずには居られなかった。

「なぜベラトリックスに僕のことを黙ってた?」
「……」
「僕だと分かってて言わなかった」
「――グズグズするなドラコ、やっちまえ…」

明らかに表情の変わったドラコ。背後からゴイルが耳打ちして促すが、ドラコの杖は攻撃を放たない。

「"ステューピファイ"!!」
「うぅ!?」

突如別の位置からドラコに放たれたのは、ハーマイオニーの呪文。ドラコを引かせ、ゴイルはすぐに禁断の呪文をなんの躊躇もなく三人へ向ける。衝撃にはじける周囲のガラクタたちの合間を、髪飾りが羽をはためかせ美しく飛び去ってしまった。ハリーがしまった、と目を見張る向こうで、ロンは雄叫びを上げスリザリン生らに突っ込んでいく。

「ウワ゛ァーーー!!!僕のハーマイオニーに何をする――――!!!」

積まれた金品や家具を押しのけながらよじ登り、飛び出すピクシーの群れに苦戦しながら、ハリーは髪飾りを探し当てる。

「あった!」

ロンが突っ込んでいった先を、ハリーとハーマイオニーは状況が分からず佇んで眺める。

「逃げろぉおおおお!!ふわぁああああ!!!」

雄叫びとはだいぶ様子を変え、怯えた様子で爆走してこちらに戻り、ハリーを置きざり僕のハーマイオニーだけの手を握ると、走り抜けて叫んだ。

「ゴイルが火をつけたぁぁ!!」

ロンが走ってきた先、蛇をかたどった巨大な炎が、ハリー達目掛けて襲い掛かった。

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