Deathly Hallows(Part 2)-17
「今日から俺様に忠誠を捧げよ」
静かに言い渡すとヴォルデモートは再びニタニタと笑みを浮かべ、手下たちを振り返り何度も繰り返した。
ハリー・ポッターは死んだ!!
確信した勝利に浮かれるように笑う帝王と、その手下たち。
「今こそ我がもとに下れ…!前に進み出るか!…死ね!」
言い渡し、さらに皆の表情や背筋を凍てつかせる。ふとドラコを呼ぶ両親の声。
複雑な表情のドラコは、両親に"来い"、"おいで" と言われるまで、城のそばを離れず、そちらへ行こうとしなかった。歩みゆくドラコを、よくやったと、帝王は愛情深く一度抱き締めて迎えた。
そしてまた一人、前へ出る者があった。ハーマイオニーは驚きにあげそうになる声を飲みこみ、目を見張った。ヴォルデモートが促せば、手下たちは応えるように大笑いをあげる。
「もっとマシな奴を期待したが。…名前は?若者よ」
「…ネビル・ロングボトム」
その名に邪悪な笑い声は一層大きく上げられた。ベラトリックスはひときわ嬉しそうに、ネビルのざまを見下し嘲笑っていた。帝王もまた、嬉しそうに、品定めするようにネビルを見ている。
「お前にもなにがしかの地位を与えよう…―
「ひとこと 言いたい」
「……」
目も見ずに、恐れることなく、ヴォルデモートの言葉を遮るネビル。ヴォルデモートは表情を一変させ不愉快さを露わにし、すぐにでも殺してしまいそうな衝動を一度ぐっと堪えた。
「…、…、よかろうネビル。…聞かせてもらおうか」
ネビルの真剣な眼差しがヴォルデモートを逆撫でする。後ろのシェーマスはいつネビルを止めるべきか、緊張を途切れさせずうかがっていた。
ネビルは、息を整えて話しだす。
「……ハリー以外にも…」
「よせネビル、…!」
「毎日死んでる!友達や、家族が…!」
止めるシェーマスを振り切ってでも、ネビルは言葉を続ける。次第にネビルは帝王に向けてでなく、城の皆に向けても、言葉を紡いだ。
「今夜僕たちは、ハリーを失った…でもハリーはずっと、ここに居る。フレッドに名前も…、リーマスも…、トンクスも。みんなだ。…ムダ死にじゃない」
大切に、ネビルは自分の胸に手をやる。名を聞けばそれだけで、皆の胸の傷はズキと痛み涙がこみ上げる。ヴォルデモートはただいつ殺そうか、楽しみにしているような笑みをこぼしながら、ネビルの言葉を真剣になど聞いていない。
「……だが お前の死は違う!ハリーは僕らのために生きた!!
僕らも戦う!!」
ネビルは手の組み分け帽子から、グリフィンドールの剣を抜き取り構えた。剣は、ネビルを選んで彼のもとに現れた。
合図にしたように、ハグリッドの腕を、突如ハリーが離れた。
―ドサッ!!―
「……………!!!!」
帝王の表情が一変するやいなや、ハリーはナギニに魔法を飛ばした。
「"コンフリンゴ"!!」
爆破がナギニの身を走るが傷もつけられなかった。次の瞬間、
―ぴと ぴとぴと …―
― ザザァァアアアアンッッ!! ―
「〜〜〜 !!」
ヴォルデモートとハリーの間に、水がどこからともなく振り下ろされ巨大な柱をかたどった。その重さで城を揺らし、景色をゆらめかせハリーの姿をくらます。ハリーの復活と、出現した魔法に、ハーマイオニーは思わず笑顔を見せる。
「名前だ…!」
水柱を見上げてそう呟くジョージの声は、震えていた。
名前の魔法に紛れたハリーは、ヴォルデモートと距離が取れ繰り出された攻撃を逃れられた。
―バシュ!!― ―ッバシュ!!―
「何をしてる!?逃げずに戦え!!!」
響くベラトリックスの制止の声と、ハリーが生きていると知り早急に煙になり逃げるデスイーターや手下。
ハリーは回り込んで、ハーマイオニーたちに蛇を殺すよう託した。城は早急に保護呪文で皆が守られたが、剣を構えたネビルは真っ先に帝王に突き飛ばされた。
残った手下たちを携え、再び怒りに満ちた帝王が、ハリーを殺めんと城へ攻め入った。帝王は囮になったハリーだけに的を絞り、ナギニに手をかざすと早急に姿くらましをした。
…――
ひと気のない、瓦礫と埃にまみれる城内。いたるところで魔法を交わらせる者や、動かなくなってしまった者の姿がある。
―バシン!! ― ―ガラガラ…!―
「ッ……!」
姿を見せず繰り出されるヴォルデモートの攻撃を、ハリーは直前で回避し続ける。ハーマイオニーに手渡されたバジリスクの牙を握る手は汗をおびる。
階段を音もなく上がるヴォルデモートの前に飛び出し、攻撃に出る。
―バシャアアン!!― ―バシャ!!―
「〜〜〜…!」
ヴォルデモートの邪魔をするように、ともにヴォルデモートに立ち向かうように、海から生み出される大波のようにきらめく大量の水が加勢する。大きく揺らめき生き物のようにまとわりつくそれに、ヴォルデモートは怒りの目を向けていた。
「多分もう、…"リーバー"の魔法はもう、私から去ってしまったの。…だけどまだあなたのために戦いたい」
名前の魔法が、"リーバー"のものでも誰のものでもない、名前だけの魔法が、ハリーを守り続けている。
「ッッ 汚らわしき…!妖精風情めがァァ!!」
ハリーを、ナギニと挟み撃ちにしても少しも引かない水の化身に、ヴォルデモートは感情のまま叫び怒りをぶつけた。ハリーが天井を破壊し距離をおく手前、落としてしまった牙を、場所を変えたヴォルデモートに消滅させられてしまった。
距離のできたナギニに、間髪入れずハーマイオニーとロンが立ち向かう。頭めがけて石を投げたハーマイオニーに、ナギニの目は狙い通りに向けられた。
―ガラララ!!―
「っうわぁ!!!」
― バシャアッ!!!―
足場を崩されたハリーが地面へ激突する寸でのところを、水の塊が守るように駆け付けて守る。衝撃の和らいだ矢先、塊にヴォルデモートの魔法が命中した。辺り一面にはじけ、衝撃音は、痛がる声にも聞こえてしまう。
「〜 名前!!」
思わず口をつく、もう死んでしまった彼女の名前。
ハリーは瞬く間にヴォルデモートの伸ばされた無数の裾に首や手足を拘束され、身動きがとれなくなった。