Deathly Hallows(Part 2)-18



ナギニに牙を構えるも、そう簡単にはかすり傷すら付けられない。

ヴォルデモートはハリーの身を寄せその手で頬を殴り飛ばした。もう鬱陶しい水が繰り出されたり化身が現れることはなくなった。気配をさぐるように、煮えるはらわたはそのままにハリーを見下す。

「焦ってるな?」
「〜〜〜〜!!!」

挑発するハリー。黙れという代わりのように再び力の限り叩き飛ばすが、ハリーは引かず体制を整え威勢を変えない。

「杖は永遠にお前には従わない…!」
「あああぁぁ!!!」

杖を向けるがその魔法は、外に続く崖と化した城壁の淵までハリーを軽く飛ばしただけであった。

「スネイプは殺した!」
「杖の主がスネイプでなく 他の誰かだったら!?終わらせよう、トム…!始めたときと同様…――

2人で!!」

ハリーは意を決したようにヴォルデモートの首を捕まえると、その崖から身を乗り出した。

辺り一面、城の全体に響き渡る、二人の叫び声。煙に変え飛ばざるを得ないヴォルデモートは怒りの限りハリーの顔や体を掴み爪を立てる。衝突した城の壁を何度も壊しながら乱れて飛び、初めにやって来た門の前に、不時着するように辿り着き、ごろごろと転倒した。
手を離れた杖。互いの姿を見やり、早急に杖を構え、再び魔法を繰り出すのは、ヴォルデモートもハリーも同時であった。

―ッ…―
― ガガガァァァァア!!!! ―

色の異なる、二人の強大な魔法が、衝突し大気を揺らし、風を起こし、火花を広範囲に散らす。どちらも押し負けない現実に、ヴォルデモートの目には知らずと涙が浮かぶ。
ハリーは蘇りの石で再会した皆を、蛇に立ち向かう親友たちを、強く思い杖を構え続けた。

城では牙を手から離してしまったロンとハーマイオニーが、迫りくるナギニに逃げ惑う。瓦礫につまづいた拍子、ロンがなんとか繰り出した攻撃魔法は、変わらずナギニの巨体を払いのけたりなどできない。
大口を開けて迫るナギニ。ハーマイオニーをぎゅっと抱き締め、二人きつく目を閉じて衝撃に構えた瞬間、

「わあああぁぁぁ――――!!!」

―ザシュ!!! …―

ネビルのグリフィンドールの剣によって、ナギニの体が切られて消滅した。

「………」

分霊箱の消失にはた、と止まるヴォルデモートとハリーの交戦。姿が見えず状況が分からずとも、ヴォルデモートは絶望を、
ハリーは好機を、感じ取った。

「ッ!!!!」
「ッ!!!!」

― ガガガガガガガガ!! ―

再び衝突する二人の二色の魔法。威力はまったく異なり、ハリーの魔法にヴォルデモートはみるみる押し負けていった。言うことを聞かない杖と己の右手を、懇願するように見るヴォルデモート。願いは虚しく、ハリーの魔法がその手に行きつき、ニワトコの杖を弾き飛ばした。

―バシュ!  ……! ―

くるくると弧を描いて、杖はまるで引き寄せられるように、ハリーの手に握られた。

「…!! ……!!!」

ヴォルデモートは絶望したのも束の間、言葉を何も発することなく、よろめく体を、しだいに灰に変えていった。ハリーもまた、その姿に目を見張り、見届ける。

深いため息のような声とともに帝王の全身が塵となったとき、ようやくホグワーツに、暖かな日の光が戻り優しく差し込み、静かな勝利を迎え戦いは幕を閉じた。


…――

明るい安心に満ちた広間で過ごす皆も、その皆を眺めて歩くハリーも、表情や心持はまるで異なった。ハグリッドとハグを交わし扉まで歩くと、手を繋ぐロンとハーマイオニーもやって来た。


「この兵隊の先頭に居たなんてな…」
「名前は戦いの最後まで守ってくれてたよ。…」

瓦礫に紛れるように橋に何体も転がり身を破壊されし尽くしている、石像の兵士たち。三人はゆったりと、久しぶりにごく平然と、その辺を歩いた。

ふと橋の淵に立ち、手のニワトコの杖を見下ろすハリー。

「杖はなぜ彼に従わなかったの?」
「持ち主は別にいた」

ロンと並ぶハーマイオニーをハリーはその場に立ったまま振り返りつつ話した。

「やつはスネイプを殺したが杖の主はスネイプじゃなかった。…ダンブルドアからドラコが杖を奪った時、ドラコが杖の主人となった。だけど…」
「…」
「僕がドラコの杖を奪ってからは…」
「それって…」

口を挟んだロンを、ハーマイオニーがバッと振り向く。ロンを見やって、なんともないかのように、ハリーは頷き "僕のだ" と答えた。
ロンは最強の杖を手にした"僕ら"は、いったいどうする?と問い掛けたが、ハリーは少し眺めると

― パキン、―

躊躇する様子は見せずに杖を折り、その淵から深い崖の底目掛けて投げ飛ばしてしまった。
ロンも、ハーマイオニーすらも、何か言いたげに杖を目で追い、呆然とした。

「…名前ののように誰かに宿る可能せ…―」
「ないわ」

とっくに見えなくなってしまった杖。呆気にとられたままそれだけ言葉を交わし、数歩先で佇むハリーに二人は歩み寄り、手を握った。

「……」
「……」
「……」

優しい日の光は、三人のことも、愛しい皆の家のホグワーツも、包み込む。
本当に終わったのか信じられないような心地こそ感じながらも、三人はどの表情にも、心からの安堵を浮かべていた。


…――

19年後。

開店前、早朝のウィーズリー・ウィザード・ウィーズ。ハリーが触れるよりも先に扉は迎え入れるように軽快に開いた。

「! …」

楽しい歓迎に少し笑い店に入ると、歓迎するような笑みをこちらへ向けるジョージの姿があった。

「時間通りだね ハリー」

ジョージは戦い後しばらくして、ロンと共にマグルの世界へ、名前の訃報を伝えに家族の元を訪れており、衝撃と悲しみに彼らが染まってしまう直前、オブリビエイトを唱えたのだった。流れる涙もそのまま、ポカンとしてしまった彼らをおいて帰路につく頃、名前の本心じゃなかったらどうするんだと、ロンはもとより気が進まなかったが、"名前は、愛する俺の選択を尊重してくれるはず"と、ジョージは聞かなかった。

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