12



やっと下ろしてくれた、いまいる場所も、見通しが悪い上に獣道すらないので、これでは方向音痴ではなくても迷いそうな気がした。
しかし、尊奈門は気にしたような様子もなく、
「私はここまでだから。気をつけて行けよ」
と、そう言ったが早いか、さっさと行ってしまった。

尊奈門が去る前に地図を残して行ったので、仕方がなく桜はそれを頼りに行くことにした。
この草地を出る方法も聞いていたから、とにかく道まで出てから地図を確認し、日が暮れるまでに着く距離なのかと不安になりながらも、桜は少し早足で歩き出した。
ただ、山道はあまり慣れていないし、ここ一ヵ月以上は外に出ることもなく運動不足でもあったから、あまり長い道のりだと途中でバテてしまいそうだった。
荷物も必要最低限にしてもらったが、風呂敷に入れられているので手に持つしかなく、そんなことすらも桜の気力を削いでいた。
重くないと思っていた荷物が重く感じるのは、気力のせいもあるのかもしれない。
そして山道の距離がわかりづらいのも、一因に思えた。

誰かが通ったら、あとどれくらいか聞いてみようと思ったのに、こういうときに限って、誰も通らない。
そういうものかと半ば諦めていれば、見たことのある背中が見えたので、桜は思いきって訪ねてみることにした。
「すみません。あの、ちょっと道を訪ねたいんですが……」
前を行く背中に向けて声をかければ、まるで分身したかのように、全く同じ姿をした人物がその向こうから顔を出し、桜が声をかけたほうの人物も、当然のように振り返った。
見た目は本当に双子のようであるそっくりさに驚きつつも、桜は見覚えのある二人にホッと息を吐く。
「ここに行きたいんですが、この道で合ってるんでしょうか? 合ってるなら、あとどのくらいかかるかわかりますか?」
桜は見せたほうが手っ取り早いと思ったので、手にしていた地図を見せて聞けば、二人の顔色が変わったのがわかった。
目配せをしているのもわかったが、とにかく言葉を待つと、向かって左側、つまり桜が声をかけたほうの彼が口を開く。
「ここなら、もうすぐそこだけど、どんな用事で行くの? ぼくたち、そこの生徒なんだけど」
そう聞く彼の横で、もう一人のそっくりな彼は、ジッと桜のことを値踏みするように見ていて、怪しい奴かどうかを判断されているのだろうかと、落ち着かなかった。

「あのあたし、新実桜といいます。これから、忍術学園に入学するんです」



[*前へ] [次へ#]

12/120ページ


ALICE+