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警戒を何とか解こうと、先に名前を言って、そう説明する。
二人がそこの生徒だと言ったから、桜にとってはこれから関わる対象の人間になるので、だからこそ自己紹介したのだと思ってもらえればいいと、そう考えていた。
「ああ。だから、忍術学園に行きたいところなの?」
桜が先に声をかけたほうの彼が、そう言ってやさしい笑顔を見せてくれる。
声と一人称、それからその柔らかい物言いから察するに、こちらが不破雷蔵だろうかと思っていると、もう一人の彼もそれに続く。
「それなら、私たちに付いて来るといい。私たちもいま、戻るところなんだ」
やはり、こちらが鉢屋三郎だろうかと、話を聞いていた桜はうなずきながら、そんなことを思っていた。
「はい、ありがとうございます!」
きちんと頭を下げ、二人の後に続きながら桜は、少しずつ緊張し始めていた。



忍術学園に到着すると、彼らは学園長先生の庵に桜を案内してくれた。
道中のあの短い間に二人が自己紹介してくれたので、もう名前に困ることはなかったけれど、成り行きなのか、学園長との話の席に二人も一緒にいたのが少し気に掛かっていた。
「それでクラスなんじゃが……希望はあるかのう? お前さんの父親からは、厳しく学ばせたいので忍たまのクラスに入れて欲しいと頼まれとるんじゃが」
一通りの説明を受けた後、学園長にそう言われた桜は、寝耳に水だったので、目を丸くしてしまう。
父親というのは、雑渡の右腕である山本陣内が務めてくれているのは承知しているが、その他のことは初耳だったからだ。
桜はすでに15歳なんてとうに超えているから、いまから覚えるには徹底的にやらなければならないのだろうが、くの一の教室に入るとばかり思っていたので、びっくりしたのだ。
ただ、タソガレドキは凄腕の忍者揃いのようだし、忍たまの中に入って、男並みに忍術を身につけておかなければ、使い物にならないということだろうか。
要らないと言われるのは、いまの桜にとっては恐いことだったから、そうしろと言うのなら従う他に選択肢はなかった。

「父様がそう仰っていたのであれば、そのようにしていただきたいのですが、女であるあたしが忍たまのクラスに入るだなんて、そんなことは可能なんでしょうか?」
普通はくの一に入るものではないのかと思ったから、桜はそう聞いたけれど、学園長は特例として認める、という鶴の一声で決定してしまった。
「そうじゃのう。四年生でどうじゃ?」



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