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前例があるので、それに倣って四年生と決めてくれたようで、学園長がそう聞いてくれたが、桜は自分からその学年を引き下げた。
「それでしたら、せめて三年生にしていただけませんか? 筋力不足もありますし、低学年から始めさせていただきたいです」
せめてもの、一学年下という桜の提案に、学園長はあごをつまむようにして考え込んでいたが、でもすぐに了承したようにうなずいた。
「では、三年生からの編入を認める。必要なものは小松田くんに揃えさせてあるから、後で受け取りに行きなさい」
そう言われ、桜はとにかく早く荷を片付けたかったので、早々に学園長の庵を後にした。

小松田くんというのは、門のところで入門票を持っていた人だと教えてくれたのは、不破だった。
結局、庵を辞去して来たのも一緒だったので、部屋に戻るついでだと言われたのだ。
「これからよろしくお願いしますね、不破先輩、鉢屋先輩」
小松田の姿が見えるや否や、桜がそう言えば、不破は苦笑するし、鉢屋は何だか怪訝そうな顔で視線を寄越した。
「学園長先生が四年生でいいかと仰っていたが、本当は何歳なんだ?」
いいかということは、つまり四年生ではないということで、それなら少なくとも、桜は不破や鉢屋と同じ年であってもおかしくないから、だから先輩と付けた言葉に難色を示したのだろうか。
むしろ、不破や鉢屋より年上の可能性もあるのだし、それなら先輩どころの騒ぎではなかった。

少し考えたが、本当の年を言うべきではないかと、桜はかわすように口を開く。
「……女性に年を聞くのは失礼ですよ、鉢屋先輩」
にっこり笑ってみせれば、鉢屋がウッと詰まるのがわかったので、桜は話を切り上げるべく、早急に頭を下げた。
「案内していただき、ありがとうございました」
もう目の前だったから、二人から反応が返る前にもう、桜は小松田に声をかけてしまっていた。

くの一の長屋は人数の都合上なのか、一人部屋だったので、何となくホッとしてしまった。
忍たまの友をもらったのがうれしくて、ペラペラと中を見ていたが、先に着替えてしまったほうがいいかと思い、桜は早速、忍服を着てみる。
着方は説明されていたし、大体は知っていたので、難なく着ることはできたが、頭巾がけっこう難しい。
覆面は果たしてできるのか、非常に不安に思いつつも、何とか格好がついたことに安堵する。
三年生の服は鮮やかな緑色なので、着こなすのは難しいんじゃないかと思っていたが、思ったよりは馴染んでいるような気がした。



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