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すると、三反田はうれしそうな笑みを浮かべてみせたけれど、すぐに眉を下げると、心配そうに口を開いた。
「できたら保健委員会に入ってもらいたいけど、委員全員が不運ぞろいだから、迷惑かけちゃう気がする」
桜が不運じゃなくても、一人で苦労することになるだろうから、それが可哀想だと三反田は言う。
そう言われたら、どうしても押し切ることはできなかったし、そして図書委員会はバランスが取れた委員会のような気がするから、すぐに決めることもできず、桜の考えはまた、散り散りになって行った。

結局、どうやっても決まらなかったので、人数の一番少ない火薬委員会にしようと思い、委員長代理の久々知にその旨を話しに行けば、思っていた以上に感謝されてしまい、桜としては何だか複雑になる。
これだと思って決めたわけではないので、余計に申し訳ない。
「どんな理由でも、入ろうと思ってくれたことが大事だからね。気にしなくてもいい」
不破とはまた違う柔和さで、久々知は笑顔を浮かべてくれたのだが、その破壊力の凄さにはつい、のけぞりそうになってしまったくらいだった。
「……久々知先輩って、まつげ長いですね」
笑うと顕著になるなあと感心したように桜が言えば、唐突だったからか、久々知は目を丸くしただけで何も言わない。
そう言われることは慣れているのか、それとも気になることではないのかだけ、知りたくなった。



火薬委員会の仕事が具体的に何なのかは、桜にはつかめていないところがあるけれど、とにかく名前通り、火薬の管理などが主ではないかと思っていた。
考えようによっては、一番楽な委員会とも取られがちなので、まわりからは、仕事の楽さで選んだと思われているかもしれない。
しかし、仕事の楽さとは裏腹にそれなりに覚悟のいる委員会ではないかと思うので、桜は桜なりに、焔硝蔵に行くまでは勢いを必要とした。
火薬に慣れるような生活もして来なかったし、正直なところ、恐くも感じる対象なので、大量の火薬に向き合うのは腰が引ける。
だが、これから授業でも使って行かなくてはならないし、慣れておくのはいいことではないかと思えた。

「ぼくと同じ、編入生の桜ちゃんが入ってくれて、うれしいよ」
委員会前に顔合わせをしたのだが、そこで斉藤タカ丸にそう声をかけられ、桜は無性にうれしくなる。
確かに同じ編入生ではあるが、そんなふうに仲間意識を持ってもらっているとは思わなかった。



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