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桜としては、タカ丸が四年に入ったという前例があったから、途中編入がしやすかったため、個人的に気になっていた。
「あたしも、ご一緒できてうれしいです」
タカ丸の笑顔につられるように笑いながら桜は言ったが、自分が入るとさらに平均年齢が上がることには苦笑するよりなかった。


夜の闇に紛れて任務を遂行することもある忍者ではあるが、再び雑渡が訪れたのが深夜だったことに、桜の心臓は大きく跳ねた。
今回は前回よりさらに気配を殺していて、寝ている最中とはいえ、口を塞がれるまで気づかなかったことに、桜は驚きを隠せずにいた。
「雑渡さん……」
口を塞いでいた手が外され、真っ先に転がり落ちたのは、目の前の人の名だった。
何をしに来たのかを聞くのは、やはり失礼な話だろうか。
「落ち着いたら、報告の文くらい寄越すもんじゃない?」
桜の心を見透かしたみたいにそう言い、雑渡はふう、と息を吐く。
委員会を決めるまで、最初の顔合わせまで、委員の仕事を始めるまで、とそれぞれに間があったし、バタバタしたのが落ち着き、ようやく何でもない毎日を送れるようになるまで、少し時間を要したのかもしれない。
雑渡の言う落ち着いたら、というのは、委員会関連のバタバタのことではないだろうが、編入してからのことだと考えたら、それこそ、ずいぶんと時間が経ち過ぎていた。

すみません、と謝る桜に雑渡は気配だけ、柔らかくさせる。
「楽しく過ごしてるってことなら、仕方ないね」
雑渡の言葉に、便りがないのは元気な証拠だと桜は言いたくなったが、それも失礼かと思い、飲み込んでしまう。
ただ、学校に行かせてもらっているのだし、報告するのは義務だろうから、今度からはできるだけまめに書いてみようと桜は思う。
「……それはそうと、焔硝蔵に入るときは充分に気をつけなよ」
唐突にそう言われ、反射的にうなずきかけていた桜は途中で気づいて、ハッと顔を上げる。
まだ火薬委員会に入ったことは話してないのに、そういうところはさすがというべきか。
けれど、ふと違うことが浮かんで来て、桜は眉間に皺を寄せた。

こう見えても桜はタソガレドキの人間になるし、戦闘力には全く自信がないが、それでも例えば間者と取られた場合、どうなるだろうか。
桜自身にその気はないけれど、本当はタソガレドキから来ているのだと知られてしまったら、間者と勘違いされる可能性は多分にあって、そんな桜が火薬委員会になるのはまずかったんじゃないだろうかと思う。



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