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「見てないけど、団体で動くものなの?」
そう聞けば、伊賀崎がいろいろ説明してくれたけれど、桜は途中で聞くのを諦めた。
説明も長いが、単語が難しくていまいちわかりづらい。
とりあえず、触ったら炎症を起こすらしいということだけは覚えられた。

「手が空いているので、手伝いましょうか?」
主に竹谷に向けてそう聞いてみると、伊賀崎のほうが先に口を開く。
「自習するつもりだったんじゃないか?」
手にしたままの忍たまの友を差して、逆に質問されてしまったので、桜はそれを懐にそっとしまい込むと、大丈夫だと答える。
「いまいち自習の仕方がわからなかったから、先生方か先輩方にご指導いただこうかと思ってたんだけど、なかなかお会いできなくて……」
だから、今日のところはあきらめると言えば、目の前で竹谷が変な顔をしたので、見当がついた桜は楽しそうな笑みを零した。

「竹谷先輩はお忙しそうだったので、数にお入れしなかったんです。むしろ、あわよくばなんて、下心があるかもしれませんよ?」
早く毒虫を見つけられたら、竹谷は手が空くのだし、それは桜にとっては好都合だと言えば、なるほどその通りだと納得される。
「じゃあ、後で自習のやり方教えてやるな」
毒虫を探してくれた礼に、とそう言ってくれたので、桜はうれしそうにうなずき、そのアオバアリガタハネカクシとやらを、二人と一緒に探し始めた。



結局、毒虫の捜索でつぶれてしまったので、自習をするどころじゃなかったが、翌日、竹谷が改めて教えてやると言ってくれたので、どうにか自習をすることができた。
そしてさらに翌日、昼食後に暇そうにしていた竹谷に話しかければ、組み手がしたいのだが、相手がいなくてつまらないのだと言われた。
五年生を請け負う木下先生や山田先生は、ただいま職員会議中らしいし、六年生は自主トレで忙しい。
加えて五年生はまだ登校して来ていないということなので、それでだろう。
竹谷はどう見ても体を動かすほうが得意そうだし、きっと組み手も強いんだろうなと思ったから、四年生はどうですかとは聞けなかった。
もちろん、四年生が登校して来ているかは知らなかったので、そのせいもあった。

組み手というのだから、体術なのだろうが、あいにく桜もそちらは自信がない。
小太刀術を習うのに、基礎体力をつけたり、刀を持たずに対戦したこともあるが、それは本当に基本的なことだけだ。



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