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長屋の部屋は大抵、同じクラスだと同室であっても不思議がないような部屋割りになっているので、鉢屋と久々知が同室ということはあり得ない。
なのに、同じ部屋で作戦会議を開く理由がわからなかった。

「まあ、座れよ」
鉢屋に促され、桜は庄左ヱ門と並んで、とりあえず鉢屋の傍に腰を下ろした。
「おれたちもここにいる理由はね、目的が同じだからなんだ」
核心から久々知が口にしたけれど、それだけではさっぱりわからない。
目をしばたたかせていれば、再び鉢屋が口を開いた。
「どこに忍び込むかと、どんなものを奪って来るかっていうのはくじ引きだったんだが、私が引いた内容が、兵助とまるきり同じだったってわけだ」
と、説明されても、桜はさらにわからなくなっただけだった。

それに気づいたのか、久々知が苦笑しながら、鉢屋の後を引き受けてくれる。
「目的地や目標物はバラバラで、簡単なものから難しいものまで様々らしいんだけど、難易度の高いものは、こんなふうに二チーム合同になってるってことらしい。要するに、おれたちの引いたものの難易度が高いってことだ」
だから久々知チームと鉢屋チームは合同なのだと聞かされ、桜は納得すると同時に、とても不安になった。
目的地が危険なのか、目標物を手に入れるのが大変なのかは知らないけれど、桜は急にドキドキし始めてしまった。

「それで、忍び込む場所はどこなんです?」
隣に座る庄左ヱ門が肝心なことをずばり聞けば、なぜか久々知と鉢屋は一瞬顔を見合わせ、それから鉢屋のほうが答えてくれる。
「タソガレドキ城だよ」
「えっ……?!」
思わず口から滑り落ちた驚きの声に、その場にいた全員の視線が桜に向いた。
みんながどういう意味で振り向いたのかはわからなかったが、鉢屋には前に疑われていたこともあったから、桜はできるだけ焦らないように口を開く。
「タソガレドキ城って、何とかっていう恐い忍者の組頭がいるって聞いたことがあるんですが」
恐る恐るというようにしてみたのがよかったのか、池田がすぐに反応してくれる。
「雑渡昆奈門というらしいです」
「ぼくと庄左ヱ門は、その人に助けられたことがありますし、そんなに恐くないんじゃないかなあ」
そう伊助も言うが、そこでどうかな、と口を挟んだのは、久々知だった。

「今回はおれたちが敵になるわけだし、敵にとっては恐い存在なんじゃないか?」
雑渡の腕は優れていると久々知が言えば、鉢屋もまるで苦虫を噛み潰したようにつけ足した。



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