07



何人も複数でやったのなら、それもかなり抵抗があるのだけれど、一番はやっぱり、そこに雑渡がいたかどうかではないだろうか。
ただ、始めからいたのだし、このタソガレドキ忍軍の組頭でもあるし、その可能性は高かった。

雑渡さんに見られたなんて、恥ずかしすぎる!
思わず桜が赤くなっていれば、なぜか尊奈門はその様子をジッと見てから、質問の答えを促して来た。
どう答えていいか迷い、桜はその小刀を持ち上げると、鞘を少し引いて、刃に視線を落とす。
頭の上では尊奈門が焦ったような気配を見せたが、気づかない振りをして、またゆっくりと鞘をはめた。
「……これは、あたしのものではなかった気がします。でも、使ったことはあるみたいです」
手に馴染む感じがすると言いながら、桜はその小刀を元の場所に戻した。
言ったことに、嘘はない。
これは自分の所有物ではないが、習っていた先生が持っていたため、ときどき真剣を触らせてもらえたのだ。
「使えるの? 何で?」
ストレートな聞き方に、思わず習っていたからだと言いそうになるが、それはまずそうだった。
「父に、教わったんだと思います」
そう答えるが、納得が行ったわけじゃないらしい。
だけど、尊奈門はそう、と一言答えたきりで、深く突っ込まなかった。


小刀を持った正体不明者ではあるが、ここから追い出されることにはならなかった。
信用してくれたとは思いにくいから、手元に置いて見張ることにしたんじゃないかと、そういう結論に至った。
ここに置いてもらえるなら、何でもいい。
殺されたり、追い出されたりしないだけマシだと思うことにした。
好待遇ということはないが、それでも桜は怪我人のせいか、待遇はいいほうだった。
動けるようになると、監視がつくのではないかと思ったが、そんなことはなくて、でも外には出ないように、やんわり言われていた。
この部屋からは出てもいいが、まだ外は出ないほうがいいと、そう言われた。

あれからずっと尊奈門ということもなく、ときどきは雑渡も顔を出していたが、相変わらず言葉が少ない。
雑渡さんと呼ぶことはできるようになったが、それだけだった。
「思ったより、治りが早いようだね」
怪我の具合も度々見に来て、そう雑渡は言うが、完治したら出て行けと言われるんじゃないかと、桜はハラハラしていた。
飄々とした言動と同じくらい、気まぐれにしか思えなかったので、いつ気が変わるかしれやしなかった。



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