02



もう充分寝たと言いながらも、眠そうに目を擦る仕草で、それが本音かどうかわからなくなった。

なかなか合流しない尾浜に痺れを切らしたのか、今度は竹谷ばかりではなく、久々知たちまでも呼びに来たので仕方がなく尾浜は立ち上がる。
「じゃあ、おれはもう行くね」
そう言いながらも、もう少しだけ桜と話していたい気持ちが足を引っ張った。
振り切るように駆け出し、待ってくれていた竹谷たちに文句を言われながらも、尾浜はようやく彼らと合流できた。


それから夜まで続いた組み手で、すっかりへとへとになった尾浜は、先に風呂でどろどろの体を綺麗にしてから、どうにか夕食を胃に収め、今日は早く寝てしまおうかと考えていた。
「尾浜先輩」
そっと声をかけられたのはそんなときで、もう少しで通り過ぎてしまうところだった尾浜は、慌てて足を戻す。
「……もうメシ食った?」
とっさに口を開けば、尾浜から出て来たのはそんな言葉で、だけど桜はにこやかに笑って、はい、と律儀にうなずいた。

「昼間は、ありがとうございました」
ペコンッ、と音がつきそうなほど勢いよく頭を下げ、桜がそう言うから、もしかすると礼を言うためだけに自分を待っていたのだろうかと、尾浜はうれしくなる。
「……礼を言われるようなことなんてしてないよ?」
少しだけ格好つけてみたくてそう尾浜は言うけれど、桜は全部わかってしまっているような顔で笑っていた。

「日除けになっていて下さったんですよね? すぐに気づけなくて、お礼が遅くなってしまってすみません」
桜が申し訳なさそうに言うから、そんなこといいのに、と尾浜はつぶやくような言葉をもらした。
「おれの好きでやったんだしね。ほら、日除けくらいにはなれるかなあって、さ」
小柄な桜より体が大きいのだから、それを活用しない手はないと尾浜が言えば、桜は小さく笑って、それでもまたありがとうございます、とこぼした。

そんなふうに感謝されたのでは、自分が凄いことをしたみたいで逆に恥ずかしかったけれど、桜が喜んでいるのなら、それでいいと思うことにした。
「……今度はさ、木陰ででも一緒に寝ようか」
陽の光がきつくないなら、木陰じゃなくてもどこでもいいけど、と尾浜が提案してみれば、桜は目を丸くした後、ほんのりと顔を赤くして、はにかむように笑った。



End.





















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はっきりと言葉にはしなくても、想い合っている二人だったりします。
どっちも初い感じですが。


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