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そして菜園は新野先生が管理しているので、保健委員の管轄でもあるのに、なぜ毎回、桜は竹谷に聞きに来るのかも謎だった。

「……桜先輩はああ見えても実はおっとりしててさ、菜園でのんびりするのが息抜きになるらしい」
伊作に言うと長居できないので、だから竹谷に聞きに来るのだと聞かされるが、鉢屋には意味がさっぱりわからない。
「何で善法寺先輩に言うと長居できないんだって?」
不破も同じ事を思ったようで、そう聞く。
「あんまり長いこといると、心配されるんだって言ってたなぁ。で、探しに来られるけど、途中で善法寺先輩のほうが穴に落ちたり、大変なことになるから、息抜きなんて悠長なこと言ってられないだろ」
そう言われたら伊作は不運の塊みたいな人だし、確かにそうだったから、桜ではなくても、それはわかる気がした。

菜園に桜が行くのは放課後だと言っていたが、校庭をうろうろしているところに遭遇した。
何をしているのだろうかと思ったが、手には生物委員会の連中がよく手にしている壺を持っているから、毒虫探しを手伝っているのだろうと、すぐに想像がつく。
菜園で手入れを手伝っていたなら、ついでに毒虫探しも頼まれても不思議ではなかった。
「桜先輩!」
でかい声でそう呼んで姿を現したのは竹谷で、桜は足を止め、追い付いて来るのを待ってやっている。
肩を並べて何やら言葉を交わし合っていた二人は同時に笑い、それを見ていた鉢屋はそこで初めて、おや? と、思った。

六年生とも仲がよくて、中でも伊作辺りとは砕けたような言動をするが、竹谷とだとずいぶん楽しそうじゃないかと思ったのだ。
竹谷と話すのを見るのは三回目だが、そういえばいつも、こんなような顔をしていたな、と鉢屋は思い出していた。
しかし、それなら竹谷と話すのが余程楽しいか、竹谷だから特別かのどちらかであり、もし後者だとするなら、いろいろ納得もできた。

菜園のことを伊作ではなく竹谷に頼みに来るのは話す口実だったり、竹谷と話しに来たとき、傍にいた鉢屋や不破には目もくれなかったのは、竹谷を見ていたかっただけだろうし、菜園でのんびりするのが好きなのも、毒虫ばかり追ってる竹谷とは、そこでしかゆっくりできないからかもしれない。
そう結び付けて行くと、納得できないことはなくて、鉢屋は一人でうんうんうなずいてしまった。
竹谷の様子からすると、彼にとっての桜はよき先輩のようにしか見えない。



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