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もうすることがなくなったのだとつけ足せば、竹谷はまた三郎らしいと言って笑った。

「……八左ヱ門は、生き物の世話が気になって登校したんでしょう?」
ずっと黙っていた桜がそう聞けば、竹谷は持っていた草のようなものを振りながら、そうだとうなずいてみせる。
「孫兵に任せっきりにしとくのも悪いんで」
しばらく前から来ているのだと、やはり予想通りの答えだった。
生物委員会の委員長代理としての責務もあるだろうが、竹谷のはもう性分ではないかと思えた。
それを聞くと桜は荷物を解き、中から包みを取り出すと竹谷の手の上にぽんと載せる。
「そんな八左ヱ門におみやげ買っといたわ」
この間と同じ状況に鉢屋は思わず目を丸くしたが、竹谷のほうは慣れているのか、ごくあっさりと受け入れる。
「ありがとうございます」
「みんなの分あると思うから」
竹谷の礼の後に続いた桜の言葉に、その気遣いまでやはりこの間と一緒なのかと、鉢屋は感心にも近い気持ちでいっぱいだった。



その後すぐに、桜はくの一長屋のほうにある自分の部屋へと行ってしまったので、鉢屋も自室で着替えてくることにした。
歩き出せば、竹谷がついて来たので、鉢屋は聞いてみる。
「他には誰が登校してるんだ?」
想像通りであるなら、それなりにいるだろうと思いつつ聞いたのだが、竹谷が言うには六年生はやはりみんな登校しているらしい。
「あとは兵助と、四年の田村くらいしか見てないな。下級生は多分、孫兵くらいしか来てないんじゃないか?」
まだかなり、夏休みが残っているのだ。
上級生だとて半分しか来ていないのだから、下級生は当然ながらそろっていないだろう。
そこまでは考えなかったが、登校している顔ぶれは大体の予想がついていたので、鉢屋はほんの少しだけ、おもしろくなかった。

結局、竹谷は鉢屋の部屋までついて来て、人が着替えている横で、桜からもらった包みを開け始めていた。
生き物の世話があるとはいっても、一日中ずっとというわけではないだろうし、もしかしたらいまはすごく暇だったのかもしれない。
「お。栗の子餅だ」
後ろからそんな声が聞こえ、のぞくと確かに栗の子餅が山になっていて、六個か、と無意識に鉢屋は数えてしまう。
みんなの分と言った、その“みんな”に誰が当てはまるか知らないが、前回のみやげのときを参考にするなら、五年のみんなになる。
だが、あのときはちゃんと五本だったのに、今回は六個あるから違うのだろうか。



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