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そう考えてしまったが、それは邪推かもしれなかった。


「よし。兵助も呼んで来て、三人で食うか」
鉢屋ほど細かいことは気にならなかったらしく、そう言って竹谷はさっさと立ち上がる。
「三郎はお茶よろしく!」
それだけ言い残すと、あっという間に竹谷は出て行ってしまい、勝手なことを、と思いはしたものの、鉢屋は結局、茶の用意をしてやった。

茶を入れ終えた辺りで、久々知を連れた竹谷が戻って来たので、鉢屋も腰を下ろす。
差し入れといえば、確かに竹谷はよくもらっていたようで、鉢屋も過去にはたまにおすそわけにあずかっていたりしたが、まさかそれが桜からのものだとは考えたこともなかった。
「桜先輩は相変わらずだな」
いま正に鉢屋が口にしようと思ったことを、隣にいた久々知が代弁するかのように口にした。
頭の中をのぞき込まれたような正確さに、鉢屋はとっさに言葉が出なかったが、
「まめだよな」
と、そう続いたので脱力しそうになる。
観点が若干ずれていないだろうかと思わなくなかったが、久々知は気にならないのかもしれなかった。

「んー、そうかあ? いわゆるこれは、またよろしくねっていう意思表示だと思うぞ?」
茶のお代わりを自分で注ぎながらそう竹谷は言うが、意味がさっぱりわからない。
「……八左ヱ門が好きだから、ってことじゃないのか?」
遠回しに聞いても伝わらない気がして、鉢屋はずばりと聞く。
竹谷のことだから、大げさな反応を見せるかと思ったが、飲んでいた茶を吹き出すようなこともなく、ただ苦笑してみせた。

「何で、そうなるんだよ?」
と、ものすごく渋い表情をされてしまうと何だが、そうとしか見えないのだから仕方がない。
「ことごとく、八左ヱ門八左ヱ門て言ってる気がするからだろ?」
鉢屋が答える前に、聞いていた久々知がスッと口を挟む。
さっきの様子では、気づいていないか気にしていないかのどちらかかと思ったのに、ちゃんとわかっていたらしい。
「そう、か……? そんな気はしねえけどなあ……」
桜の言動を思い返しているのか、考え深げに首を傾げながら竹谷はまだ半信半疑だから、鉢屋もそうだとうなずいてやれば、竹谷の苦笑が強くなった。

「……桜先輩、別に好きな人いるんじゃないかー?」
他人事のように言うが、それが竹谷なんじゃないかと鉢屋も久々知も言っているつもりだった。
だから、その言葉にため息しか出て来ない。



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