幕間



「……ああいうの見ると、桜も可愛いとこあると思うよなあ」
三年は組の浦風と三反田の二人と話す桜を見て、不意に竹谷が言った。
ちょうど久々知たちも見ていたところなのだが、桜が自分たちといるときより、はしゃいでいるように見えるので、竹谷の言うこともわからなくはなかった。
「おれらといると、たまに年下とは思えないような顔するしな」
大人びているというより女を感じさせる顔だと竹谷が言うことに、また久々知たちは揃ってうなずいてしまっていた。

「だから、タソガレドキの忍組頭に目をつけられたりするんじゃないの?」
その話を桜が来るまで話していたので、思い出したように尾浜がそう言うと、久々知も続けた。
「他にも誘われていたようだったし、人気もあったよ」
入ったばかりだというのに、すでに人気があったのもどうかと思うが、実際に久々知も桜の話をしている門番などを見ているから、大げさではなかった。
「化粧すると、さらに美人になるんだろ? 大人受けするよ、それは」
尾浜がうんうんうなずきながら言うが、何を納得しているのかはわからない。
だが、その通りだったので、久々知はそんなものかと思いながらも、うなずいておいた。

「料理も、凄く上手なんだよね?」
鉢屋にでも聞いたのか、不破がそう聞くから、桜が作った餡平豆腐の味を思い出しながら、久々知はそうだとうなずく。
「絶品だった」
そう答えるが、それに異議を唱えたのは、今朝は口数が少なかった鉢屋だった。
「それはどうだろうな。あの場にいた庄左ヱ門に聞いたが、桜は始め、塩を大量に入れようとして止められたらしいぞ。料理は手慣れているようだが、それはうまいうちに入るのか?」
見ていた庄左ヱ門が言うのだから間違いないだろうが、桜の作ったものは豆腐の他もおいしかったので、久々知には鉢屋の問いに答えることはできなかった。

「またあの餡平豆腐というのを作ってくれと言ってあるんだが……」
名残惜しくてそう久々知が言えば、鉢屋は呆れたような大きなため息を吐き出した。
「知ってる。まあせいぜい、期待しないで待ってることだな」
同じ味が作れるか怪しいと鉢屋は言うが、鉢屋も桜の料理は気に入っていたので、それは久々知のためを思ってのことかもしれなかった。

浦風と三反田の二人にさり気なく手を貸してもらいながら、桜が出て行くのを見送った後、竹谷がまた口を開く。
「まあでもさ、化粧した桜、見てみたいぜ」
美人は大歓迎、と言えば、茶化すように尾浜が突っ込む。
「八左ヱ門って、女の子とか興味あったんだ? 生物にしか興味ないかと思ったよ」
からかう気満々な口調にもかかわらず、竹谷はまじめに返す。
「それは孫兵だけだっつうの!」
正確には伊賀崎も女の子に興味くらいはありそうだったが、竹谷が拗ねているのがおかしくて久々知が笑えば、話を振った尾浜や不破、さっきまで顰めっ面をしていた鉢屋まで笑っていた。



End.

























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五年生は仲良し、を目指したつもりですが、特に仲の良さは目立ってないな…。

藤内と数馬の二人と話す彼女を見ながらの、五年生の会話でした。



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