幕間



保健委員会はみんな不運だから、と三反田に、苦笑混じりに再び説明されたのは、あの後すぐのことだった。
巻き込んでごめんね、と三反田に謝られ、桜は何とも言えない気持ちになった。
彼らの不運ぶりはよく知っていたし、遭遇したことで狼狽したり動揺したりで散々だったりもしたが、それはやはり謝られるようなことじゃないと思うからだ。
保健委員会の彼らのせいだなんて、考えたこともなかった。

怪我をしたことに遭遇したからというわけじゃなかったが、しばらくの間、時間を惜しんで知識を詰め込むことに夢中だった。
薬草の知識はやはり必要だし、あのとき三反田や川西は摘んでいた薬草で、適切な処置をしていたし、不破たちの手当ての様子を見ていても手慣れたものだったので、桜ももう少しどうにかしたかった。

「相変わらず、勉強家だな」
庭の木陰で、書き留めておいたものを復習していれば、そう言って鉢屋が姿を現した。
隣にすとんと腰を下ろすと、鉢屋は桜の手からそのメモを奪い、それに視線を落としながら、さらに口を開く。
「聞いたよ、雷蔵に抱きついたこと。……いや、泣き付いた、だったかな?」
「……人聞き悪いこと言わないで下さい」
どちらも厳密に言えば違うからそう言うと、鉢屋はハハッ、と楽しそうに笑う。
「いや、私も酷く狼狽した桜が見たかったなあと思ってさ」
さっき不破に桜が抱きついた話をしていたから、恐らく一部始終を聞いたのだろう。
だから、自分が狼狽した話を知っていても不思議ではなかったが、桜にとっては複雑だった。

「悪趣味にも程があります」
鉢屋の手からメモしたものを返してもらうと、桜はハア、とため息を吐く。
よりにもよって、そんなこと見たがらなくてもいい気がした。
「そう? いつも冷静な子が慌ててる姿なんて想像つかないから、気になるってもんでしょ」
さらりと返されたことに、桜は頭が痛くなりそうだった。
完璧に、おもしろがられている。
しかもやはり、年下に子供扱いされているようで、いただけなかった。

この間のように桜が憮然とすれば、気づいた鉢屋もハハハッと笑って同じ反応を見せる。
桜が子供扱いされるのが気に入らないと、気づいているのかもしれなかった。
「もっと怪我には気をつけないと」
ガーゼはすでに取れたが、怪我は綺麗に治っていなかったので、鉢屋の手が傷にそっと触れるから、こういうことをする人だっただろうかと、桜は目を丸くする。
だが、そんなに真剣な顔で言われてしまったら、おざなりな言葉でかわすわけにもいかなくて、はい、と桜は小さな返事をした。



End.



















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保健委員が絡んだ挿話の幕間になります。
多分、三郎は彼女が心配だっただけなんじゃないかと思います。



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