神々は人生悪戯を開始する
「莉芳!オモシロイ報告書が届いたよん」
勢いよく扉を開け放ちやってきた訪問者は、白い神父服に身を包んだ青年だった。この部屋の主が座っている立派な机に手をつきながら、饒舌な彼の舌がまわる。
「へぇ」
「数年前から子供のまま姿の変わらない男のコと犬へ変身する青年の話なんだけど。何か興味、そそられない?」
「成長不良の子供と人面犬の話が?」
「あのね…」
呆れたような声を出すが、それでも彼は気にしないようだ。
「犬塚信乃。犬川荘介。共にアノ大塚村の生き残りだそうだけど5年前の大塚村っていったらキミの担当だったよね?」
「そうだったか?」
「何、トボケてんの!?あの【村雨】だってあれで行方知れずになっちゃって、アンタ上から大目玉くらったでしょーが!!」
青年が呼びかけても莉芳は興味のない顔を覗かせるだけ。それが余程つまらなかったのか、青年は話を変えることにした。手元にある資料を彼の机の上に散らばせる。
「とりあえずコレ置いとくから興味あったら見てみてよ。……ああ、それと。僕らと同種の娘が数日前拾われたとか…そんな風のような噂が舞い込んできてさ…その犬塚信乃に拾われた、とか……まあ、こんなことも興味ないか。―――じゃあね 」
意味深な事を言い残し、厭味ったらしい笑みを浮かべて青年は扉を閉めた。パタン、という音がしてから手にしていた資料を机の上に投げる。ヒラヒラと落ちていく紙は先程置かれていった紙の上に綺麗に重なった。
「ったく、ただ生きることもままならんとは……それは、気の毒にな」
そう呟きながら、彼は引き出しの中にしまわれた小さな手鏡を取り出した。藍色に漆の光沢を放ちながらその細工の手鏡を手にすれば莉芳は、口元を和らげた。瞳を瞑り背もたれに身を預けると、脳裏の奥に浮かんだ少女の姿。
「汐慧」
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