四獣神家の移住先は悪行跋扈
「着物はイヤ。信乃の方が似合うもの。地味な修道服も大嫌い。ああ、でも黒は好きよ。リボンもお揃いにして。安物はイヤ。靴も黒、ヒールは7センチ。それ以上でもそれ以下でもダメよ。それから、お茶はローズヒップとレモングラスのブレンド。スコーンにはサワークリームをたっぷりね。生ハムとチーズも食べたいわ〜」
「……キミ。ホンットーに、可愛気ないね」
「人を拉致した挙句こんなトコロに閉じ込めておいてどの面下げて言ってんの?このキツネ男!!」
「あの二人をここに招待するためには君が必要だったんだ。それにしても、大塚村の生き残りの娘はもの凄く美人だって聴いたけど、噂は当てにならないね」
「あら、それは本当よ。だって信乃兄さまの事だもの」
紅茶のカップを浜路は持ち上げ、一口含む。
「本当にお人形さんみたいだったもの。私なんて足元にも及ばないくらい綺麗だったわ」
「お人形みたいなお兄さん?」
「15になるまで女の子の格好をさせると丈夫な子が育つって慣習があったのよ」
「ふぅーん…、あ。調べてみたら君は養子だったね。羨ましいかい?愛されて育ったその彼が」
不敵に微笑む要に対して、浜路はカップをテーブルの上に置いて、挑発的な笑みを浮かべた。
「いいえ。だって私、小さな頃から信乃と荘介に大事にされて、あなたのようなキツネ男とは無縁でしたもの」
「…あ。お茶おかわりする?」
「いただくわ」
キツネによって注がれる紅茶がカップを満たすと浜路が要を見つめながらカップに口をつける。
「ところで…いい加減汐慧の会いたいんだけど。あの犬はなに?」
「ああ、八房の事?うーん、八房は主人である莉芳の言う事しか聴かないからな。僕にはどうすることも出来ない」
「心配なのに、部屋に一歩も入れてくれないんだもの」
「まあ、カレもカレなりに考えての行動だと思うから大目に見てあげてよ」
要の言葉に周囲は納得するしかなかった。薄暗い室内の中で静寂な寝息を立てる少女を囲うようにベットに寝そべり室内を占領する犬神、八房は今日も少女の寝顔を護っていた。
ALICE+