人鬼は神子を抱き咽び泣く
あの時感じた気配を頼りに帝都を歩く。少し入り組んだ道へ入れば古い建物が連なった場所へ出た。
文明開化の真っ最中なのか、古い建物や新しい建物が入り混じった世界に楽しくはなった。
人間の世界ではこんな建物もあったんだ。石が連なる壁や木材の塀、緑が生い茂る庭園などを観たり、触れたりしながら街をめぐる。川のせせらぎを頼りに歩けばあの時感じた気配に辿り着く。
足を止めて見上げた先は古い建物だった。人の気配はしないけれど、門構えに触れようとすれば結界が張られていた。しかもこれは、私がよく知るものに似ている。外見を目くらましにしているって事はこの先には何か人間には知られたくない、或いは隠していると推測出来る。もう一度手を伸ばして指先に力を込めればすんなりと中へと誘われるように引き寄せら思わず地面にずっこけた。
『いたたたっ』
地面の上で寝転んでいると一匹の白い猫が目の前を通りにゃと一鳴きした。
『猫?』
毛並みの整った綺麗な白い猫で私の周りを可愛い鳴き声で鳴きながらまるで「 早く立って 」と言わんばかりに急かされている気がして身体を起き上がらせると下には小石が連なっており、右を向けば水舎があり。正面を向けば御賽銭があった。そして鈴と奥には神を祭る御供え物が並ぶ。
『ここは…神社?』
良く知る風景だった。私が長年暮らしていたからかもしれないが、何だか未視感を覚える。周囲を見渡す限りではあの外装からは想像もつかないくらい立派な社だった。
どこも古びていないし、人に知られたくないものや隠しているものがあるとは到底思えない。けれど偽るくらいだ、何かあるかもしれない。中を調べようと立ち上がると足元に白猫が擦り寄られてしまい『 うーん 』と悩みながら一歩踏み出すと白猫はまるで着いて来てと言わんばかりに先へ歩きだしてしまう。変な猫だなっと思いながらも私も境内の周囲を歩きだした。
神聖すぎる…神が鎮座しているの?でも信仰されなきゃ存在など出来ないはず…ではこの正体は一体……?
謎に包まれた神社に眉を潜めた。もうすぐ一周という所で竹林の奥が見えた。小道を歩きながら近づくとそこは小さな池で。浅そうに見えるが中央は深いと窺える。
『何かあるのかな?』
白猫も一緒になって覗きこむ。
目を細めて窺うように覗くが何も見えなかった。小さな溜息をついてしゃがみ込み水を掬い口元まで持っていき喉を動かすと思いかけずに驚いて地面に座り込んでしまう。私を案じるように白猫は私の身体に身を寄せてすりすりと頭を押し付けて来るがそれどころではなかった。
『なっ…コレって……!』
私の神社と同じ!という事はここは―――。
辿り着きそうな答えの前にそれは突然の訪問者によって幕引きとなる。
「こんな所で何しているんだ?」
声をかけられると同時に白猫はどこかへ消えてしまった。
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