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-------side:JUN ARISUGAWA


祈先輩は体調不良により。途中で帰宅してしまった事を聞いた桜井は少し眉を寄せた。自分を責めそうだったのでそれを遮る。


「祈さんはそんなやわい精神力じゃないから。本当に体調不良だ」
「うん……ありがとう純」


桜井の背中をポンポンと叩きながら、支倉先輩はスポンサ―について悩んでいた。


「問題はスポンサ―だな」
「スポンサ―ですか?」
「ストライドの公式試合は基本。街中でやるからね。コ―ス設営費に遠征費などなど。高校の部活予算で賄える金額じゃないんだよ」


門脇先輩が説明してくれた。確かにスポンサ―が居なければそもそも試合など出来ない。


「なるほど。でもこれまでのスポンサ―は?」


桜井の意見はもっともだ。方南と言えば歴代に名を残すほどの選手が居た高校。居ないわけではないだろうが……。


「残念ながら今年から他の高校についている。スポンサ―は一社あたり一チ―ムに不文律」


部室に現れた壇先生。説明をしてくれるが。


「四字熟語じゃない」
「純……」
「お前はやっぱり勇者だな」


八神に失礼なことを言われている気がしたので、技をかけてやった。


「いてててててててッ!!」
「お前にだけは言われたくない」
「何をだよ!?」


八神に絡んでいると尚も話はスポンサ―へと続く。


「逆にスポンサ―になってくれる所があれば、一チ―ムに何社ついてもいいんだよね」


徐にストライドの雑誌を取り出して掲げて見せる門脇先輩に気がついた小日向先輩はその表紙を見て笑った。


「逆に西星学園なんかだとがっぽがっぽだろうな」


神奈川県の学校か。そう言えばスカウトされた高校の名前がそこだったような……祈さん以外の選手に興味ないから知らないわ。


「西星と言えば現役芸能人が多数在籍しているからね。そう!我らも将棋の世界で名を売る事から始めてみようではないか」


芸能人。ますます興味などなかった。それにしても門脇先輩ってまだ将棋のことを推すのか、このメンツに。


「凄い執念ですね」
「ああ。そこは俺も尊敬している所だ」


初めて支倉先輩と意見があった瞬間だった。


「KGBさえなければな……」


門脇先輩が藤原にバッサリと斬られて床に伏せるが、まだ起き上がらんとばかりに謎の略語を発する。


「KGB?純知ってる?」
「それはきっと……」
「有栖川ッ!」
「カルビ・牛タン・バーベキュー、じゃない?」


八神を解放しながら答えると。タイミングよくお腹も鳴った。

「…有栖川。腹減ったのか?」

止めに入ろうとした支倉先輩は脱力したかのようで、飴玉をくれた。
意味のわからに親切心に警戒しながらも頂いた。
そんな横でやっと解放された八神は喉に手をやりながらも会話を続けたいようで。


「それって結局なんですか?」
「説明しよう!KGBとは久我暴りょッ!」


生き生きと説明していた門脇先輩の頬を横から猫の可愛い手袋をした小日向先輩が突いた。


「忍法。猫之手地獄突き!」

「「門脇先輩ッ!」」


桜井と八神が心配してソファ―の下で伸びる門脇先輩に声をかける。思わず藤原まで立ちあがっていた。


「小日向先輩。その手袋どこで入手したんですか?」
「ん?もしかしてアリスちゃん可愛い物好きなの?」
「好き、という訳でもありませんが、あまりの可愛さに喉元過ぎてはなんとやらみたいな感じには思えている訳で。でも決して可愛い物が好きで趣味として集めている訳ではありません。ですが、このふくよかな感触。触り心地が最高の手触りとくれば誰だってどこで入手したのか知りたいと思うのですが。ああ、何て最高なシルクのような毛並みに愛らしい肉球」
「純は可愛いものが好きだ」


突然ファ―ストネ―ムで呼ばれた事にも驚いたが、趣味をバラされる事に憤慨したので頭をハリセンで叩いた。


「面倒くさい子だね」
「いきなり名前で呼ぶな!」
「別にいいだろ。中学の時は呼んでいた」
「そうだけど!いや、突然呼ぶなという話で呼んではいけないではない。だが、そういうのはバラすな!」
「?」
「わからないなら口を閉ざせ。絶対に鎖国するなよ」


一年組がそれぞれ二年の先輩たちに絡んでいると支倉先輩が少し低い声で制した。


「その話はなしだ」


さっきのKGB事件の事を差していると誰でもわかった。


「支倉氏。こういう状況だしもうD’sに頼みに行くしかないのでは?」


門脇先輩もそれ以上の事は言わず。別の提案をするものの、支倉先輩はそれに対しては露骨に長い溜息をついた。余程言いたくないらしい。


「D’sって?」
「ディ―ズインタ―ナショナル。この辺り一帯のアパレルメ―カだ」
「俗世間には詳しいですね、オ―ルバッカ先輩」
「そりゃ……俺の姉貴が経営している会社だしな」


一同その発言に驚きを隠せずにいた。


「D’sのディは支倉ダイアンのディだよ」
「いや、ド外道のDだ」
「……色々と気苦労が絶えませんね。おぼっちゃま先輩」
「……お前は気に入られそうだな」


どこか脱力している支倉先輩の覇気のなさに。物足りなさを感じていた。それにしても気に入られるとはどういうことだ?


「やっぱり……祈さんが居ないとつまらないですね」
「俺の所為なのか?」
「支倉。お前の意見も尊重するが、即断即決だ」


壇先生のとどめの一撃に長い溜息をついた後。


「背に腹は替えられないか」


諦めたようだった。自身の気持ちより部を優先、まさに部長たるは由縁の決断力だが。


「そこに祈さんは来ますか?」
「お前の基準はそこなんだな。来るに決まってんだろ。つ―かぜってぇ引きづってでも来させなきゃ話にならん」


随分と力の籠った言葉だった。


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