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side:HEATH HASEKURA
スポンサ―の件について今週の休みの日に交渉する日どりを決めて、解散した。祈には俺から連絡すると言って、スマ―トフォンを取り出したが、通話ボタンは押せなかった。何故なら脳裏に浮かんだのはあいつの泣きそうなあの顔がよぎってしまったから。
あの時と同じ顔をして、全部自分の所為だと言って、それで……。
「馬鹿だな……」
天才ランナ―と呼ばれ、誰もが憧れる存在だというのに、あいつは精神面が弱い。すぐに潰されてしまうくらい弱いのに、それでも強がって周囲から弱い部分を隠そうとする。それで結局自分が潰れてしまっても、あいつは何も言わない。馬鹿以外の言葉など見つからないくらいの真正の馬鹿だ。
だから俺が……。恭介のいない間は俺が護ってやらねぇと。やっとボタンを押せた気がした。
《ひ―ちゃん》
「起こしたか?」
通話の先から聴こえたのは少し寝ぼけた祈の声だった。欠伸を一度してから。
《ううん。どうしたの?》
「スポンサ―」
《そっか……スポンサ―。前の契約していた会社は別のところに行ったんだよね?》
「そう聞いたな。それで宛てが見つかった。今週の休みの日に交渉で行こうと思って、お前にも連絡をした」
《うん、わかった。空けておくね》
紙にペンで書く音がする。メモを取っているのか。何だかこのやりとり、まるでデ―トにでも誘っているみたいだな。
《ひ―ちゃん。ごめんね》
「な、何がだよ!俺はそんな妄想してねぇよ!」
《……ぷっ!何想像したの?ひ―ちゃんのスケベ》
「はあ?ったく……お前が走れなくなったら。そん時は俺がおぶってやるよ」
沈んだ声が聴こえた。ずっと抱えないで欲しいと思った。俺は、お前が笑ってくれるなら、それだけでいいんだ。楽しそうに笑ってくれるなら。
《……ありがとう》
その気持ちは伝わったのか、祈は少し鼻をすすって気恥かしそうにそっと囁くように聴こえた。
まあ……どこに連れて行くかは言わなかったけどな。
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