08
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side:RIKU YAGAMI
アナウンスが入り。余った靴紐を引っかからないように中に織りこんでいた。
あいつちゃんと走んのかな? もしあいつが手を抜いて俺達が負ける事になったら俺は……。
「やっぱ。マジで走るのって燃えるよな」
支倉先輩が丹念にストレッチをする。とても楽しそうだ。笑みを浮かべている。
「ひっさしぶりだぜ。この感じ」
そんな先輩を見ながらしみじみとこれからストライドをやるのだと実感した。
ほんとっ……久しぶりだな。
リレ―ショナ―専用のアプリに位置を教えるアプリを起動する。
《八神くん!藤原くん!純!よろしくお願いします》
気合いの入った桜井さんの声が聴こえた。
「はあ?!おまえっ……この馬鹿野郎!!」
突然、隣の支倉先輩から怒声が聴こえた。凄いド迫力で。目を向ければトランシ―バ―に向かって相手に怒っているようだ。ノイズの入る機械から祈ちゃんの声が聴こえる。
「あ。あいつ切りやがった……あとで尻叩く」
「祈ちゃん……相変わらずなんすね」
「ああ、別に人が変わっても。あいつだけは変わらねぇからな……そこが心配だが」
「え……」
「いや、聞き流せ。それより祈とは兄貴を通じて知り合いなのか?」
「あ、そうですね。紹介してもらったんで……最近まで付き合いなかったんで。本当に驚いたっすけど……」
相変わらず、綺麗な人だった。
「あいつが悪かったな。お前を引きずりこんだんだろ?そういう所、強引だからな」
「いえ!あの……でも、会えた事は純粋に嬉しかったんで。祈ちゃんがお願いするなら……叶えたいんで」
鼻をすすれば、支倉先輩は「難儀だな」と何故か同情された。外は騒がしく支倉先輩の名を呼ぶ女子の声が聴こえる。アナウンスも入ったし、観客も高まりつつあるようだ。
「なんか、復活前提みたいになってんすけど」
「悪いけどぶっちぎらせて貰うぜ」
拳を突き出して気合いは充分。その拳をトン と俺の胸に置いて。
「ハ―トにイイ風吹かせろよ」
その時、一隅の春風が吹いた。桜の花びらが掬われるように舞い散り。ビジョンは昔見た何かを見せる。それが何か俺にはまだ何もわからないのに、胸に僅かな高揚が湧きだす。
きっと俺はコレを知っている。
《Get Set……》
アナウンスが響き渡る。コンクリ―トに囲まれた建物内に。
さあ……幕は上がった。
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side:you
スタ―トシグナルの電子音が響いた。インカムからは規則正しいほづみんの息遣いが聴こえて来る。屋上を抜け出し、階段を壁を利用して短縮走行したのだろう。少しだけ息を止めた無音が響く。それから無事に着地したようで、再び規則正しい息が聴こえた。
『うん。後手だね。すぐ後ろを走ってるけど中々速いなアリスちゃん』
楽しくなってきた。ワクワクする心臓を押さえつけて私は久しぶりに感じたこの高揚感に舌舐めずりをした。はしたないのは承知だけど、でも、楽しいことは替えられない。
「わかるんですか」
たけちゃんの解答に微笑んだ。息遣いだけで充分な情報だ。さて、自分と短縮した道を走っているほづみんの得意なギミック走行で、着順は変更。スタ―トラインで合図を待つ。
《恙御セット》
画面など見なくてもすぐにあゆむんの声は聴こえて来た。
『じゃあ、またあとでね。たけちゃん』
GO!の合図で走り出す。アリスちゃんも中々やりおる。私がスタ―トしたすぐ後にたけちゃんもスタ―トしている。
コ―ナリングで二人並んだ。ほづみんが私に並びスム―ズにハイタッチを済ませると、熟年コンビも流れるような動作で何事も無く繋いでようだ。
追いかけられる音が後ろから迫って来ている。たけちゃんもしっかりとした身体づくりをしているからパワフルだし。足も中々速いけど……。ストライドは足の速さ自慢大会じゃないんだよね。
窓から抜けだし外を走り出す。コ―ス外である外からの戦法。春風の甘やかな風が私をそそのかすから口元が弧を描く。この時、この瞬間の風を待っていた。障害物を軽々と跳躍して壁を蹴り、更なる宙へ舞い一回転をしてひねりながら距離を稼いでマットの上に着してから窓際を走るたけちゃんの前へスライディングすように乱入した。一歩踏み出した瞬間の急激加速をすれば、ひ―ちゃんが既にスタートしていた。背中を見つければどんどん距離をつめていき。隣に並べばひ―ちゃんにハイタッチで送りだした。風に乗ってどこまでも走ってゆけ。
最終アンカ―二人の一騎打ちとなった。
『……』
高鳴る鼓動が心地よくて服の上から心臓部分の胸を掴み。軽く息を吐き出した。
『楽しかったね。ありがとう』
手を差し出すとたけちゃんは乱れた呼吸を整えてからハイタッチをしてくれた。一緒に走ってくれてありがとう。部活に入ってくれてありがとう。
沢山の感情が押し寄せて鼓動が痛みに変わったら周囲は、アンカ―の同着ゴ―ルに興奮してお祭り騒ぎ。たけちゃんもりっちゃんの所へ向かったのを確認してから。
『ごめんなさい……』
はらり、と流れた涙を溢した。
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