もがけあがけとだれかがいう

「明日よりこの者の忍術学園事務員としての採用試験を始める!」


突然の言葉だった。あまりにも突然すぎて声も出なかった。いきなり現れていきなりのこの発言、なるほど、ただ者ではないな大川平次渦正。とかのんびり考えている場合じゃない。周りにいる人たちがまじかよ正気かよこのジジィ!みたいな顔してるし声に出してる子だっていた。私もそう思う。囚われてる身だけども。


「また学園長先生の思いつきか」
「おい女、命拾いしたな」
「あ、へ?」
「学園長先生はお前を殺すに値しないと判断された。しかしな、私たちは納得していない。妙なことをしたらすぐに殺す」
「え?あ、はいはい」
「はいは一回!」
「うんうん」
「うんもだ!!ナメてんのか!」
「ノリいいなあキミ」


正直、城主様の脅しの方が恐しゅうございました。なんてことは口には出せないけれど。敵に捕まったことなんて一度じゃなくてよ!その度に仲間が助けてくれたわけだけどね。今回はそんな仲間いないし。うお、泣きたい。
い、いやそんなことより、大川平次渦正の言った言葉だ。採用試験だと?このじいさんまさか自分を殺そうとした軍の人間を生かすだけではなく、ここに置いておくつもりか。な、なんと非道なやつだ!こんなところにいたらどのみち私死ぬじゃねえか信用もくそもねえ。生き地獄、まったく酷なことを考えてくれる。報復、報復ですかそんなものに屈す私ではないわ!…なんて、そんなことないです生きれるのならばありがたやありがたや神だこのジジイは神だ自尊心と言う言葉は私の辞書にはない。


「よ、よぉし、何がなんでも生きてやるぞ…。大川平次渦正ありがとお!」
「馴れ馴れしい!」
「あだっ」


まさに深夜まで鍛練してますよーって感じの隈のすごい人に頭を叩かれた。殴られたの方がいいのかな。とりあえずたんこぶ決定だと思う。改めて大川平次渦正に礼を言うとなぜかそいつはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。なぜ、何か裏でもあるんですか。その可能性は十分にありそうだ。
一人冷や汗をたらしていると大川平次渦正は淡々と、でも心底楽しそうに採用試験の内容を話始めた。試験内容はこうだ。

七日以内に生徒全員の了承を得ること。

ふむ、七日以内に生徒全員か。了承というのは私みたいな怪しい者が忍術学園事務員になってもいいのかというものだろう。なるほど、単純単純。実に分かりやすい…って、


「無理だろぉぉお!!!!なに、やっぱり鬼だよあんたこんなの可能なわけねえだろうがよ確実に死ぬわ!!」
「お主、ちと虫が良すぎんかの」
「…!それもそう、か」


こんな条件を出してくれるだけでも私は恵まれているのだと、そう言いたいらしい。いや、でもね、そうかもしれないけどね、ほら見てよあなたの生徒さんもう勝ち誇ったような顔して私を見てるんです。あれって何年生ですかやっぱり最上級生ですか。気が重いやっぱ無理だろこれ。無理って分かっててやらすって結構鬼だよ。


「…一週間は私の身の安全は保障されるんだね?」
「ああ。約束しよう」
「わかった。採用試験……受けてやる」


言ってしまったからにはもう遅い。私の唯一と言っていい長所は度胸だから。神経が図太いとも言う。ていうかそれも城主様とかに散々脅されて耐性ついたってだけなんですけどねくノ一なめんな。
かくして、私の心臓も飛び出ちゃうくらいのはらはらドキドキ忍術学園で過ごす危険な一週間が始まったわけであります。


藻掻け足掻けと誰かが言う
どうにかなるわけでもないのに