あさ、あいいろのきみたちと

気が付いたら朝だった。なんで朝?昨日の晩私何してたんだっけ。ああそうだ忍たまの子とえーと、そういうことをしていた。でも私がそれどころじゃなくなったんだよ。それ以降の記憶がないけど。服…はなんか藍色っぽい服を羽織っているには羽織っているんだけどほぼ裸だ。下は何も身に付けていない。てことはやったのか?やっちゃったのか?つーかこれ誰の装束なんだ。部屋の中に私以外の人はいなくてただ首を捻った。と、取り敢えず服を着るか。
ああもう腹が空いて死にそうなんだけど。腹くくって食堂利用するしかないのかな。まず大川平次渦正に文句を言いにいくべきか?いや、でもこの装束も返さないといけないだろうし…いや、取りに来るのかな。……ええいめんどうだ。腹が減った。私は食堂に行ってやるよどちくしょう。


「ねえねえ見張りの子!この制服の色は五年生のもので合ってるかな?」


一応、見張りがいると踏んで天井に話しかけてみる。天井がぎしりと音をたてた。どうやら見張りはいるみたいだ。隈の子かな?その子だったらいいんだけど。ていうか生徒じゃないかもしれないしなあ。先生…だったら、まあそれはそれでそっちの方が安全だな。でも天井は返事を返してくれない。うーん、帰っちゃったかな?すごく大変だったから二度と天井は壊したくない。


「…ま、いっか」


食堂に行ったらサモンくんとか隈くんとかいるかもしれないし。昨日の五人がいなくとも同じ色の制服着た子がいりゃあその子に渡せばいいだけの話。
ぎゅるぐるる、腹がもう限界だ。食堂行こう。


「昨日はどうでしたかな」
「あ、えーと尋問中いた先生」


なんちゅー覚えかた。と肩を落とされたけどいやいや事実でしょ意味がわからない。黒い装束を身にまとったその先生は山田と言うらしい。山田と言えば私の嫌いなプロ忍者のことを思い出すわこの先生はちょっと好きになれそうにない。それだけの理由で。
昨日は餓えに苦しんでましたーと質問の答えを返すと苦笑いを浮かべられる。視線は私の手にある藍色の制服に向けられた。何があったか大方予想はつくんじゃないかなあと少し気まずくなったけどせっかくなのでこの制服は何年生のものなのかを聞くと私の予想通り五年生だと返された。


「…今から朝食ですかな」
「ええ。食堂まで来なきゃいけないなんてやっぱ鬼だ大川平次渦正」
「ははは。一人もなんですし、一緒にどうですか」
「え」
「何ですかその反応は」
「生徒に示しがつかないですよ遠慮します」


それではどうも。軽く会釈をして食堂を目指す。ううむやっぱりこうして歩くのは気がひける。さっきから忍たまやらくのたまやらの視線が凄まじい。出陣する時間帯を誤っただろうか。でも食堂とかいつ開いてるか分かんないし。今度からは授業中にでも行くべきかな。ああもうこれがあと6日、5日続くのすっげーしんどいわ。
やっと食堂についたらそこからは生徒がぞくぞくと出てきているからこの分ならゆっくり食べられるかも。五年生の子いないかな?覗くように顔を出したらちょっどバッチリと、奥の席に座ってたえーと、うどん髪の子と目があった。
「あ!」でもその子が大きな声を出したから一気に食堂にいる子達からの視線が私に集中する。ひえー怖いなあ。びくびくしてると厨房のおばちゃんがいらっしゃいとあったけー声をかけてくれたのでお邪魔させていただいた。


「お姉さん来てくれたんだ!ここ座って!」
「おはよう。あのさあこの羽織誰のか分かる?」
「雷蔵のだろ」
「雷蔵?」


それって誰?隣にいた黒髪の子が教えてくれたのでその子にもっと情報を求めるとちょっと面倒くさそうな顔をされた。思わずパチパチと瞬き。この子はきっと昨日のアレでは見張りに回された子だ。うーんクールとも言えるけどそんな顔しなくてもいいじゃないのよ。まあいいんですけどね。そんな反応が一番正しいと思います私はムカついてなんかありませんよはい。
じゃあうどんくんに説明を…と思ったのだけど黒髪さんが「あー…」と話すそぶりを見せたのでとりあえずうどんくんの隣に座り言葉を待った。


「同じ顔した奴がいただろ?」
「いたっけ?」
「…。狼の奴じゃない方」
「あー…痛いことする子?」
「多分そっちじゃない」


もうすぐで来るんじゃないかと言われたのでこのまま待つことにした。それにしてもさっきから隣にいるうどんくんが私の太ももを撫で回してるんだけど脛とか蹴っていい?それくらいならやってもいいかな。「お姉さんの太ももすごく好き」よし蹴ろう。としたとき、


「お、兵助ー、勘ちゃーん。…と何してんの」
「あっ昨日の…」
「げ」


藍色の制服が三人入ってきた。ああ、本当に同じ顔がいる。すごい双子なのかな。痛いことする子と狼くんとあとは多分見張りの子なんだと思う。狼くんと双子の一人が苦い顔をした。ああ、ああ多分苦い顔してない方が雷蔵くんだね。だって服をかけてくれる優しい子は私の顔を見て嫌そうな顔をしない。


「らいぞーくん。これ有り難う」
「あ!い、いえ…」
「ごめんねー。あ、洗った方がよかった?」
「こっこのままでいいですよ」
「そ?」


雷蔵くんがよそよそしい。あ、まあ当たり前か。うどんくん相手にしてたら分かんなくなるなあ。雷蔵くんが普通なんだろうきっと。いやあ雷蔵くんはまともだ。まともで言ったら黒髪の子もね。見張り係だったし。
一人で感心していると狼くんが訝しげに私の顔を見ているのに気がついて、何かと問えばなんか微妙な顔された。いやなんだよ。悪かったって。もう笑わないよ。


「お前昨日のこと覚えてんの?」
「うんにゃ。きみのことをゲラゲラ笑ってた以降の記憶がない」
「だろうな」
「お姉さんあの後すぐ寝ちゃったんだけど、寝相が酷すぎてね」
「布団をかけようとした雷蔵にいきなり抱きついて抱き枕代わりにしやがった…裸でな」


双子の片割れが冷たい声でそう言うとぼふん!と雷蔵くんの顔が真っ赤になった。いや、まあこの反応を見るとどうやら本当のことらしい。ま、まじて…。城でも私の寝相は評判だったけどまさか人を抱き枕にしちゃうなんて…。
ご、ごめんね雷蔵くん。恐る恐る謝罪の言葉を口にしてみれば雷蔵くんはまだ少し顔を赤らめながらもいや、僕たちも悪いことしてしまったし…。なんてすぐに許してくれた。な、なんて優しい子!お姉さんは感動いたしました。感動のあまり土下座もしたくなったけどよく考えれば「僕たちも悪いことしてしまったし」なんて全然間違いじゃないのでやめておいた。いや、きっと雷蔵くんは見張りだったのだろうけど。
だけど自分のことは棚にあげといて私の愚行を許してくれない人は、いたのだ。


「ごめんで済むと思ってるのか?雷蔵に手を出すなんて万死に値する!」
「ひい!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいでも元はと言えばきみたちが」
「口答えするな!」
「ぎゃああ!痛い痛い痛い頭掴まないで割れちゃう!狼くん助けてぇえぇ」
「兵助パース」
「勘ちゃんパス」
「涙目可愛いから三郎パース!」
「まかせろ」
「のぅおおお!パスすんなつか三郎ってお前かよ痛いわ放せ!放せうわーん!」
「三郎やめてあげなよ…」
「雷蔵がそう言うなら……」
「雷蔵くん何者」


この三郎って人は雷蔵くんに変装するくらいだからきっと雷蔵くん限定で男色家なんだと思った。性格真逆なのに見分けつかないから困るのでただちに他の方に変装してただきたいと本気で思った。


朝、藍色のきみたちと
はたからみたら仲良しかもよ