「もう、何してるの」
「先に喧嘩を吹っかけてきたのは奴だぜ」
「乗ったのは貴様だ」
「もう!」


 大の男が二人、しかもその両者ともが王下七武海として恐れられる海賊である。
 その男たちが、自分達の半分程しかない女に怒られている図は中々見れるものでもなく、周りに行き交う海兵達はハラハラとその様子を見守っていた。


「それにしても久しぶりね、ミホーク」
「お前を捕まえることができんからな、ここに居ると聞いて出向いてみたが」
「最近はあんまり新世界の方にいないの」


 ごめんなさい、と申し訳なさそうにする彼女に、ドフラミンゴは少しチリチリとした苛立ちを覚える。
 自分にはそんなこと言ったこともないではないかと思ってみるが、考えればしょっちゅう会っているのは自分の方だ。
 しかし面白くないことに変わりはない。


「おい、そろそろ行こうぜ。待ちくたびれちまった」
「あ、うん。ごめんねミホーク、今度遊びに行っても?」
「今からでもかまわんぞ」
「テメェやっぱりここで死んどくか?」
「止めて」


 ぷぅ、と頬を膨らました彼女が何とも可愛かったから、それ以上は言わないことにした。


「その時はまた、剣の稽古でもつけてもらおうかしら」
「お前に剣は合わんと何度も話したはずだが……よかろう」
「ふふ、楽しみにしてるわね」


 笑顔をミホークに向ける彼女を、ドフラミンゴは無理やりに手を引いた。驚いた彼女は、それでも苦笑し、軽く振り向いてミホークに手を振る。
 ミホークもそれ以上は何も言わず、彼女を見送った。


「ドフィ、痛いわ」
「おれは自分のものに手を出されるのが嫌いでね」
「あなたのものになった覚えはないけど……」
「部下のモンはおれのモンだ」
「……なぁに、それ」


 カラカラと笑う彼女の声は、青い空に吸い込まれていった。

 




[ prev ] [ book ] [ next ]
[ Rocca ]