「カジノ運営の会議が午後からですが」
「あぁ……政府の使者もいるんだったな」
「今回はそうですね。その後には王宮から召喚もあります」
「はぁ、面倒くせぇ」


 葉巻を吹かしながら、彼は大きなため息をついた。
 朝から機嫌が悪い気がするのは、気のせいではないだろう。このアラバスタでは珍しく、2日続けての雨模様だからだろうか。


「私が代理で出席してきましょうか」
「クハハハ、いつからおれの変わりが務まるようになった?」


 彼の嫌味な言葉はいつも通り健在。けれど少しだけ、機嫌は治っただろうか?

 こうして毎日1日の予定を伝えるのが私の仕事。
 今は国外に出る"仕事"が無いから、こんな秘書紛いなことをやって暇をつぶしている。

 もう随分と長く、殺しの仕事はしてないなぁなんて。そんなことも思わなくなるくらい、毎日私はクロコダイルさんに予定を伝える。


「予定通り出る」
「わかりました」
「夜はアルバーナでディナーを予約しておけ」
「わかりました。お相手の方のお好みなどは……」
「テメェの好きなもんにすりゃあ良い」


 手帳から顔を上げると、彼はやっぱり葉巻を吹かしながら、雨模様の窓の外を見ていた。私は予定欄に「社長:出席」と書き込み、後ろに小さく「彼とディナー」と予定を書き込む。

 雨があがらないかな、と。
 私も、彼が見上げた空を見上げる。

 今日も1日が始まった。

 




[ prev ] [ book ] [ next ]
[ Rocca ]