「ドレスローザは今、祭の最中なんだ。お前を招待したい」
「ご一緒したいのはやまやまですが、仕事がありますので」
「つれねぇなぁ……じゃあ、その上官を黙らせてやろうか?」
「戦争になってしまうから止めてください」


 マリンフォード海軍本部、一番海賊と無縁の場所で、私は一人の海賊の脅威に晒されている。
 ドンキホーテ・ドフラミンゴ。王下七武海の一人であるこの男に、何故か数か月前からこんな調子で付きまとわれている。

 同僚たちはドフラミンゴを怖がってしまい、助け舟は無し。
 ちょっと前までは上官である大将青キジが一緒にいたため、何とかあしらえていたものの、青キジが遠征にでてしまってからは、ほぼ毎日こんな調子だった。

 こんなことなら、一緒に来るかと言ってくれた青キジについていけばよかった。


 「ドフラミンゴ様、もう七武海の召集は終わられたのでは?」
 「あぁ、だからお前を連れて帰ろうと思ってな」
 「ですから私は……」
 「センゴクにでもかけあってやろうか?おれが貰っていくってよ」
 「ですから、戦争になるのでやめてください……」


 ほぼ同じ問答しかしていない気がする。
 驚くほど仕事もはかどらず、どうしたものかとため息をつくと、急に身体が動かなくなった。


「え……っ」
「ため息がでたぞ。仕事で疲れているんだろう?休養が必要だな」


 自分の意志とは関係なく身体が動く。
 くるりと身体はドフラミンゴの方に向き、彼の指がクイッと動くと、それに合わせるかのように身体が彼の胸に倒れこんだ。


「っ!ど、ドフラミンゴ様?!これは…っ!」
「フッフッフ、大胆な女は嫌いじゃねぇぜ?」


 腰に回された彼の手に、真剣にどうしようと考え始める。
 相変わらず動かない身体に戸惑っていると、ドフラミンゴの手が私の顎を捕えた。

 
「ちょっ、ちょっと待って!待って!」
「んん?」
「ど、どうしたら良いの、貴方は何が望みなの…?」
「その喋り方も良い。何度も言っているだろう?おれと一緒に来い」
「どうして私……なの?」
「一目惚れさ。他にも理由がほしいか」
「どうやって信じろっていうのよ……」


 ぷつん、と。糸が切れたように身体に重力がかかった。倒れそうになったが、ドフラミンゴの手に支えられる。
 頭が混乱して、違う意味で倒れそうだ。


「どうする?おれと来るか?」
「……休暇、が取れたら……」
「よし、じゃあこのままセンゴクのところに行くとしよう」
「はっ?!このまま?!」


 私の気苦労は続きそう。

 




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