「面倒だなぁ、オイ」
「本音が出てますよ」
「いや本音をいうと、今すぐにでもいちゃいちゃ」
「黙ってください」


 3つの海賊が同盟を組んだ。その勢いのまま、潤沢な金を排出する一国を乗っ取ったと海軍に連絡が入ったのはつい今朝方のこと。

 ちょうど手が空いていた大将が、青キジだけだったのだが、これまた間が悪く、大将青キジの軍艦は明日までメンテナンス中。
 「こりゃすぐには行けねぇな〜」と心にもないことをボヤいていた青キジだったが、近い場所にあるのだからというセンゴク元帥のお達しで、現在必死に海上で自転車を漕いでいる最中だった。


「軍艦待った方が早かったんじゃないのコレ」
「どうでしょう、夕方には着きそうですが」
「それまでずっと漕げってか!」


 とりあえず大将青キジだけでは、寄り道しそうだとか、サボりそうだとかいう理由で、補佐官である私も一緒に行くことになった。

 彼の漕ぐ自転車の後ろに座り、まっすぐな地平線を眺める。
 こんなに海は穏やかなのに、今この瞬間にも危険にさらされている人がいる。
 こうやって自転車の後ろに乗っているしかない自分も、然るべき場所に降り立てば役にたてるだろうか。


「数がやたら多いらしいですよ。だから私も一緒にってことなのかもですね」
「君は良いよ、怪我でもしたら大変」
「む、怪我なんて久しくしてないですけど」
「君に傷をつけるのは、おれだけで十分あいたたたたた」
「クザン、仕事中にそういうこと言わないで」


 思わず耳を引っ張ってやった。痛いなんてないくせに。
 それでも彼が遠征の時は、殆どが本部で待機の私。一緒に行けるのは実は嬉しかった。
 彼の背をちょっとでも守れる力になるのなら、こんなに嬉しいことは無い。


「いやぁでも嬉しいね」
「え?」
「一緒に遠征。君とずっと一緒にいられるから、寂しい思いもさせないし」
「……私も、おんなじこと思ってた」
「マジ?嬉しいね〜、君がそんなに素直に言ってくれるの」
「でも多分意味はクザンと違うかな」
「あらら」


 ガクッと頭を垂れたクザンだが、相変わらずしっかり自転車は漕いでいる。
 私はクザンの背中に軽く持たれて、目を閉じた。


「すぐ後ろに、クザンがいるのは嬉しいわ」
「君はいつも、おれを後ろから支えてくれてるじゃない」


 こういうクザンの優しさが好き。
 今回の遠征頑張ろうと、青い空に誓った。

 




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