「安室さんの作ったケーキ美味しいね!」
輝く笑顔で安室透が作ったケーキを頬張る少年探偵団の子供達は、実に子供らしくてかわいらしい。
ねぇ、君達知らないだろうけどその人の本職は探偵でもなければ喫茶店の店員でもないからね。
警察の人だからね。
暫く会わない間に家事力の上昇っぷりに妹は内心びびってるからね。
なんなの?うちの兄さんサイボーグなの?
確かに器用だったけど、ここまで家事能力高かったっけ?デザート系もプロ並にいけちゃう人だっけ?むしろプロってなんだっけ?
十年近い月日はやはり長かったらしい。
「雫さんもそう思うでしょ?」
ね!?と純粋な瞳で私を見上げる歩美ちゃんに、私は複雑な思いを抱えながらも笑顔で頷いておいた。
もうね、そんなきらっきらした顔されたらお姉さん何も言えなくなっちゃうよ。
「よかった、雫さん僕には当たりがキツイからどうかなって心配だったんですよ」
「確かに。でもあれって雫さんがツンデレってやつだからじゃないんですか?」
「ツンデレ?なんだそれ、食えんのか?」
「元太くん、ツンデレは性格のことで食べ物じゃありませんよ」
「そういえば哀ちゃんもツンデレさんって博士が言ってたよ!」
「…いや、そもそもツンデレじゃないし…」
お姉さんの呟きは誰も聞いてませんかそうですか。はい、すみません。
梓さんも天然だからあれ本気で言ってるんだろうな…あと安室透というか兄さんは根に持ちすぎだと思う。だって私が苦手なタイプなのが悪い。
「安室さんは雫さんに優しくされたいんだね!」
「勿論。仲良くなりたくて僕なりに頑張ってるつもりなんだけど、いつも冷たくされちゃって…」
ねぇそれズルくない?いくらなんでも小学生にそんなこと言うとかズルくない?
ちらりとこちらに向けられた視線はなんかちょっと勝ち誇っていた。
…腹立つなぁ。
兄さんそういう性格悪いとこ絶対よくないよ。いやほんと、この顔と上っ面だけの性格で騙される世の女性全てに言いたい。
あの人そんなに性格良くないからね。
「…ねぇ、あれなんとかしてよ」
「え、自分のお兄ちゃんなんだから人に押し付けるのやめなよ」
こそこそとコナン君に助けを求めれば、彼もまた他の人に聞こえないよう小さな声で正論を吐き出した。
どうにかできたらもうしてる。
「どうかしたんです?二人で内緒話なんかして」
「安室さんって性格悪いよねーって話し合ってたんです」
「えっ!?ちがっ、そんなこと一言も言ってなかったよ!?」
「えー?おかしいなぁ、心の声で会話したじゃん」
「心の声ってなに?雫さんとコナンくんばっかずるい!歩美もコナンくんと心の会話したい!」
「ふふっ、そうだね、じゃあ私はカウンターにもどるから、あとはみんなで過ごすといいよ」
モテモテですねコナンくん。
分かりやすい歩美ちゃんのアピールに果たして彼は気づいているのだろうか。
…なんかあの顔だと気付いてなさそうだなぁ。
あれは無自覚に引っ掛けていくタイプだろうな。
…私の兄さん自覚あるタイプでよかった…いや、それはそれでタチ悪かったね。
「狡い大人だ」
「うわ、それを安室さんが言います?」
少し離れたテーブル席から聞こえる賑やかな声をバックにすれば、カウンター内へと戻ってきた安室透が意地悪く笑った。
「それで、僕とはしてくれないんですか?」
「…うっわぁ、白々しい」
「まぁそれ以上の事でもいいですけど」
「安室透が消えかけてますけどこれいかに」
「まぁ梓さんも向こうですから」
確かに、店内に居るのも私達だけだし、この会話を聞いている人は一人も居ないのだろう。
「安室さんは駄目ですよ。だって私が好きなの貴方じゃないんですもん」
「これはまた相変わらず手厳しい」
「まぁ性格の悪さだけは同じじゃないですか?」
「今度家行ったら覚えてろよ」
「ねぇだから素が出てる!しまって!?」
「おや、貴女が好きなのはそっちの僕でしょう?」
「うわぁ、性格わっる…」
にっこり。とあからさまに貼り付けた笑顔はいっそ清々しい。
よくそんな顔できたね。
そうやって営業スマイルふりまく兄の姿を見る日が来るなんて昔の私は思いもしなかっただろう。
「疲れない?それ」
「もう染み付いちゃったからね。それに、待っていてくれる人も居ますし?」
「吹っ切れると調子乗るタイプだね」
「雫だから、かな」
笑い混じりに耳元で囁かれた言葉。
…あぁほんと、嫌になる。
「ずっるいなぁ」
「お互い様ですね」
「やっぱ血の繋がりなんてなくても似るもんだね」
「兄妹には変わりないですからね」
「うわぁ、私こんな人をずっと見て育ってきたのか…」
「満更でもない癖に」
「そりゃあ…大好きなお兄ちゃんですから?」
最後は仕返しと言わんばかりに耳元で囁いてから店を出た。
勿論お金はカウンターに置き逃げしてきましたとも。
「…こういうとこは似なかったな」
さらりとキザなセリフも吐ける兄と違って、熱くなる顔を冷ますように店を飛び出した。
きっと今耳まで真っ赤だろうなぁ。
この夜、上機嫌で自宅へと押しかけた兄さんにからかわれたのは言うまでもない。
やっぱり私の兄さんは性格が悪い。
ーーーーーー
「そんなに好きといわれたら期待に応えないとな?」
「いや、別にいいんですけど。というかそのノリは嫌な予感しかしないのでお帰りください」
「まぁまぁ。耳まで真っ赤にして告白されたらそれなりの行動で返さないと」
「いやほんといいんで帰って!?」
そんな流れで沢山甘やかされました。
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