我が家は何か凄い。
兄妹それぞれ何かしら肩書きが付いている。
肩書きというか職業というか、あと両親も凄い。
唯一平凡な一般人と言い張れる私からしたら、赤井家は何か凄い。と語彙力が死ぬくらいには凄かった。
「…ワタシ、イッパンジン、マキコムノダメ、ゼッタイ」
じわじわと滲む涙に目の前の人の良さそうな顔をした青年は一体何を思ったのだろうか。
にこりと愛想よく笑った面の下を思うと、本人からはほど遠い愛想の良さに背筋が震える。
「お前は昔から変なところで勘が鋭いからな」
「駄目って言ったじゃん兄さんのばか!!!」
それ見せちゃ駄目なやつ!
ハイネックを指先で下げて首に巻かれたチョーカーのボタンを押した沖矢昴ならぬ赤井秀一はニヒルに笑った。
完全なるネタバレを食らった。
兄さん死んだってきいてたけどいやまさか…と思っていた過去の私。
大丈夫、そのいやまさかだった。
同い歳の好青年に化けていたのは兄でした。
いやまぁ私だけ養子だから血の繋がりはないけども。
「FBIで死んだとか言われてでも実は別人として生きてましたってこれ絶対危ないやつ!巻き込まれたら駄目なやつ!」
「巻き込むとは言ってないだろ」
「真純に謝れ!!!!」
思い切り突き出した拳は難なく受け止められた。
ゴリラかよ。
どうどう。なんて平坦な声で言ってみせるこの兄を殴れるのは母しかいないのだろうか。
「真純にどんな顔して会えばいいか分からない…」
秀兄大好きっ子の妹はそれはもう可愛らしい。
私や秀吉のほうが子供の頃よく一緒に居たのに、気付けば真純は秀一兄さん大好きっ子になっていた。
あんなに強くてかっこよくて可愛い妹なんて他にいる?居ないよね知ってた。
なのに家族にすら死んだことにしていたこの兄は、あっさりと唯一の一般人であった私に種明かししてくれたわけです。
ナンテコトシテクレタ。
「久しぶりの再会だろう?もっと喜べないのか」
「兄さんの天然さがたまに腹立たしくて仕方ない」
何故真顔。
「で、やっぱり君もグルか!しってた、お姉さん知ってたよ!!」
「あはは…」
「笑って誤魔化すのいくないと思います」
江戸川コナンというキラキラネームの少年もなんかヤバイと察知していた過去の私、貴女は間違っていなかった。
というか毛利さんのこと眠らせてその後ろでリボン片手に喋ってたらそりゃヤバイって思うじゃん当然じゃん!!
「だからお前は勘が良すぎるんだ」
「人の心読むな」
「顔に出やすいのが悪い」
ぐうの音も出なかった。
「ううっ、沖矢さん好きだったのに…」
「…は」
「えっ」
なんだその反応。
ポカリと半口開けて阿保面晒した二人。
「いやだってあんな好青年居たら惚れるでしょ当然でしょ!」
「お前の好みは特撮ヒーローじゃなかったか?童顔の」
「あの、最後のはいう必要ありました?」
「僕も雫さんは安室さんみたいなタイプが好きだと思ってた」
「違うから。ポアロのお兄さんは爽やか好青年じゃないから。童顔のイケメンなだけだから。多分お腹の中は真っ黒なタイプだから」
性格悪そうって思った勘は絶対に外れてないと思う。
おい、笑うな兄さん。何が面白いんだ。絡まれる度に困ってるの私だからね?
「沖矢さんはさぁ、優しいし声がいいし落ち着いてるし、なんかこう、世話焼いてくれそう。煮込み料理ばっかだけど美味しいし」
「胃袋掴まれただけじゃねーか」
「何か言ったかなコナンくん?」
「なんでもないよぉ!」
この子のぶりっ子っぷりも嘘くさいと思っている。
顔がいいだけに計算じゃないのか…と思う感覚はポアロのお兄さんに抱くものと少し似通っている。
騙されてはいけない。
そう考えたらうちの兄はとても善良な男なのかもしれない。
「兄さんくらいの無愛想さがちょうど良いのかもね」
「…それは褒めているのか?」
「褒めてる褒めてる。でも女の敵って私の直感が言ってる」
「褒めてないな?」
「私は秀吉くらいの駄目さが見ていて心地いいかもしれない」
完全に尻に敷かれている血の繋がらない双子はやっぱり見ていて安心する。
いや、血の繋がりも無ければ生まれた日も違うから双子ってのも変だけど。
「沖矢昴が好きと言ったな?」
「何故今それを掘り返したんです?」
「丁度いい。俺はここを離れるわけにはいかなくてな、外に買い出しに出るタイミングも中々掴めないんだ」
「おっと、待って、これ完全にパシリの予感」
「大学時代の友人と久々に再会し意気投合。恋仲に発展した結果お前は共に工藤邸で暮らしている」
「居ませんね?」
「もうそれでいいんじゃない?」
「家主の許可は!?」
私の叫び声などつゆ知らず。
携帯をいじりだしたコナンくんと完全に決め込んだ非情な兄。
「新一兄ちゃんのお父さんとお母さんも大丈夫だって」
しばらくして見せられた画面には、ご丁寧にピースサインを決めた元大女優と、その旦那様である有名ミステリー作家が写っていた。
そして大歓迎の文字。
私が大歓迎じゃありませんが。
「私の意思は?」
「よかったな、お前の好きな沖矢昴と付き合えて」
「中身兄ですけど」
「まぁまぁ」
「そこで沖矢さん出すのやめて!」
「雫さん本当に好きだったんだね」
「というかその声がどストライクでした…」
「ほぅ…」
「や!め!て!」
「これからよろしくお願いしますね、雫さん」
にっこりと笑んだ沖矢昴。
「妹いじめて楽しいかこの鬼畜め!!」
訳の分からない叫び声を上げてお隣の阿笠さん家に駈け込めば、哀ちゃんに何大人気ないことやってんのよ。さっさと帰りなさい。と追い出されました。
なにこれ私が悪いの?
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ネタ提供ありがとうございました!
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