兄さんの何処が好きかと聞かれれば、全部好きと答えるだろう。
昔、兄さんに懐くようになってから一部からはブラコンと呼ばれるようになっていたが、好きなものは好きだから仕方ない。
特別どこがいいか挙げろと言われると困るのに、兄以外といる時はいつも兄さんがいいって無意識に思う。
ここに兄さんが居たら。
いつもそうだった。
だから兄が出て行ってからは考えなくても良いように勉強ばかりしたり、仕事に打ち込んだり、余計な事を考える隙間を全て埋めてきた。
そうやって何年も過ごして居たから、漸く側に来てくれた兄さんを見ると、もう何処にも行かないでと縋り付きたくなる。
兄さんは私のことをそんな風に思うだろうか。

兄さんの仕事が大変なことは分かっているつもりだ。
だから中々降谷零として会えなくても不満はない。
テレビで流れる恋人への不満なんて特集のバラエティーを見ながら、レンジで温めた温野菜を頬張った。
レンジ調理ならできるだろ。といって兄さんが買ってくれたシリコンスチーマーはとても役立っている。

『折角会えたらイチャイチャしたいじゃないですかぁ』
『会えなくても毎日連絡したい!』
『手とか繋ぎたいし外でチューもしたい』

若い男女のカップルは楽しそうにインタビューの受け答えをしていた。
これがある程度年齢の高いカップルになってくると、少し洒落たバーでとか、落ち着いた大人の恋愛を互いに求めるようになる。
恋愛と結婚は別だと言う若者に、スタジオのタレントの大半は頷いていた。
確かに、自分の身の回りの人たちも総じて口を揃えて言っていた。
恋愛にはときめきを、結婚には安らぎと安定を。

「…ときめきかぁ」

兄にときめきとやらを感じたことはあるかと聞かれれば、即座にノーと答えるだろう。
別に恋しているとは思っていない。
ただ誰よりも好きで、誰よりも兄を一番に望んでいるだけ。
側にいたいし居て欲しい。
…なんだか束縛の激しい彼女みたいだ。

「兄さん以外は考えられないなぁ」

私の隣に居る人は兄さんしか望まない。
兄さんの側でしか私は落ち着けない。
誰よりも安心できるのが兄さんなんだ。
結婚できてもできなくても、兄さんが居てくれるのなら関係性なんてどうでもよくて、でも兄さんはただの兄妹では嫌だと言っていた。
それでも、兄さんは教えてくれると言っていたから、男性としての好きは兄さんから教わればいい。
私も兄さんじゃないと嫌だ。

「…あれ、もしかしてこういうこと?」

兄さん以外考えられないのなら、それは兄さんのことがそういう意味で好きという事なのかもしれない。
ただ側にいれればそれでいいって思って、血の繋がりとか気にしたことは一切なかったけど、成る程、もしこれで血が繋がっていたら兄さんはずっと悩み続けていたのかもしれない。

「兄さん真面目だからなぁ」

もしも血が繋がっていても、私は気にしなかったかも知れない。
結婚できないからとか血の繋がりとか一緒に居るのに関係ないし。
…もしかしてこれが私と兄のズレだったのかな。

「血、繋がってなくてよかったかも」

多分血縁関係あったらもっと拗れていたし、こうも丸く収まることはなかっただろう。
絶対に兄さんはそれを気にして勝手に罪悪感を抱いて離れて行くから。
結婚できるのなら子供だって産めるし、兄さんとの新たな家庭とか築けてしまうのだろうか。

「…実感わかないなぁ」

でも、もしそうなるとしても、やっぱり私の相手は兄さんしか考えられなかった。
ごちゃごちゃ考えても仕方ない。
何よりも誰よりも好きなのは兄さんってことだけわかってるんだからそれでいい。





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