いつからだろう、抱き着く妹の匂いを甘いと思うようになったのは。

「兄さん」

俺を呼ぶ声が甘く感じるようになったのは。

「兄さん好きだよ」

俺の好きとは違うと思うようになったのは。
果たしていつからだったのか。
気づけば俺は妹を妹として見れなくなっていた。

背後から首に回された白い腕。
甘えるように肩に顎を乗せられ頬がくっついた。
背中に密着する妹の体。
暖かくて柔らかくて、甘い香りが全身を支配するみたいに、頭がくらくらした。
視界に入る白い腕に吸い付いて、赤い花を咲かせたいと思う自分に気付く度に、どうしようもない絶望感を味わった。
兄として慕う妹に持つべきものではない感情。
どうしようもない位に、好きだった。
もう純粋な気持ちで抱きしめることも、頬にキスをする事も出来なくて、俺から雫に触れる事が怖くてたまらない。
少しでも自ら触れてしまえば、抑えた感情が一気に溢れ出しそうで怖かった。

「ああ、俺も好きだよ」

あんなに自然に伝えられた好きの言葉は含む意味の違いを知った今、苦しい言葉になっていた。






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