世の中には知らなくていい事がいくつかある。
これは精神年齢アラフィフの薄っぺらい人生経験上で学んだ自論だけど、まぁなんていうかその…小学一年生の腕時計から何か吹き出したかと思ったら毛利探偵が寝たとか、その影で蝶ネクタイ片手に犯行の推理をその小学生がかまし始めたとか、これは知らなくていいことだと思うんだよね。
というか見てはいけないものを見てしまった感が半端ない。
思わずガン見しちゃったけど、推理ショーに真剣な小さな探偵は私の視線に気づいていないらしい。
そして他の大人も気づいていないというドッキリかな?これドッキリだよね?という現象を味わっていたわけだけど。まぁなんていうか、警察すらも上手いこと使っちゃえる小学一年生がいてたまるかって話なんだけどね。
何が言いたいかって言うと、知りたくもないマジックのトリックを偶然知ってしまったような絶望感に打ちひしがれてるってことなんだけど、誰も分かってくれないよね。
だって全員気づいてなかったもんね。
前々から小学生らしくない子供だとは思ってたけど、こんなのってない。
「…君さ、もうちょっと人を欺く事を覚えた方がいいよ」
「え、急にどうしたの?」
「…お姉さんからのアドバイス」
何言ってんだと言わんばかりの顔で首を傾げる姿は子供らしいが、もうね、さっきの見たら君を子供扱いとか素直にできないんだよ。気づいてお願い。
いや待て気づいたら気づいたで面倒な事になりそうだからやっぱやめて。
「そういえば以前、少年探偵団やってるって歩美ちゃん達に聞いたけど、どんなことやってるの?」
あれは健康診断に帝丹小学校へ行った時、それはもう自慢気に言ってきた子供たち。
小学生の頃ってそういうグループでのごっこ遊びとか好きだもんねぇ。と微笑ましい気持ちになっていたが、先程のコナン君の光景を見ていたら不安しかない。
殺人事件の現場で推理ショーしてるんだよ?おかしくない?ごっこ遊びの範疇超えてますけど。
「…落し物探しとか?」
はいダウトー。
絶対嘘だね。
にっこり笑顔に冷や汗垂らした証言が真実なわけがない。
コナン君に足りないのは自然な演技力じゃないかな?
猫も被りすぎると不自然だからね。
これも精神年齢アラフィフの薄っぺらい経験故の結論ね。
愛想も振り撒きすぎると胡散臭いんだよ。
安室透がいい例だけど、彼はあの顔面で全てをカバーするのだからイケメンは須らく爆発すべきだと思う。
都合の悪い事は笑顔で強引に流すとこあるよね。
コナン君も可愛いお顔と可愛い声ではぐらかすもんな。よくわかってらっしゃる。
「実はお姉さん今携帯持っていてね、おっと、これは光彦くんの番号だー。きっと無邪気な子供の事だから素直に吐いてくれるだろうなぁ」
「ごめんなさいごめんなさい!でもそんなに危ないことはして無いから!」
「本当は?」
「…殺人現場で犯人探ししようとする事がたまに…」
「君も苦労するね」
その顔は苦労人の保護者の顔だった。
君は本当に小学生かな?
「危ないって自覚があるだけいいか…でも子供ってできる事が限られているから、利用できる大人は利用して、上手いこと無理せず生きるのをお勧めするよ」
「それってどういう…」
「大人は頼れるだけ頼っとけって話」
前世の記憶を持ったまま人生二周目をスタートさせた私には、もう一度子供を演じるのはかなりキツかった。
当時は自分は大人だからって無意識に思っていたけど、周りからみたら子供だし、体も子供だから出来る事は限られている。
だから、自分の現状を受け入れて周りを頼るようにしたら随分と生きやすくなったのを覚えている。
…前世では考えられない程の末っ子気質になってしまったけど。
「ほら、蘭ちゃんが呼んでるから行っておいで」
「うん。あ、最後に一つだけいい?」
「なにかな?」
「それって雫さんを頼ってもいいってこと?」
「…頼る大人は選んだ方がいいよ」
あくまで頼れる大人を利用するなり頼るなりしなさいよというお話だ。
私は大分役立たずの大人だからあんまり頼らない方がいいと思う。
「でも秘密を知ってるなら共犯者みたいなものでしょ?」
「言ってくれるね…暴こうとしないんだから目をつぶってよ」
「利用できるものは利用しろって言ったの雫さんだろ」
「それが本性か。さっさと猫被ってお帰りください」
またね!と言われた通り百点満点の猫を被って去っていったコナン君。
ちくしょう、ガン見してたの気づいてたな。
事件現場では絶対に会いませんようにと祈ることしかできなかった。
だってあれ、絶対利用する気満々の顔だったし。
面倒事だけは勘弁してほしい。
← →
戻る
top