兄さんはイケメンだ。
男前って表現よりも、イケメンって言葉の方が似合うイケメンだ。
爽やさの中にすこしだけ甘さがあって、タレ目だけど目が大きくて、青みがかった瞳はとても綺麗だ。
安室透の時は甘さ全開、にこにこ笑顔の優しいお兄さんを押し出しているけれど、降谷零はとっても綺麗でかっこいいって思う。

「そんなに見つめてどうしたんだ?」

肘をついた手に顎を乗せて、まるで見てるこちらがとろけるような目で私を見る兄さん。
緩んだ口元と暖かい眼差しは、とても優しい顔をしていた。

「兄さんのこと、好きだなぁって改めて思ってた」

耳馴染みのいい優しい声もその眼差しも、全部好きだ。
…安室透は少しだけ苦手だけれど。
それでも兄さんの一部だと思うと嫌いとは思わなかった。

「やけに素直だな」

伸びてきた手はまるで猫でもあやすように頬を撫でてから、指先で顎先を撫で始める。
それが少しだけ擽ったくて、でも気持ちよくて、目を閉じてされるがままになる。
すると唇に触れる感触。
離れていった瞬間目を開ければ、満足げに笑っている兄の顔。

「…不意打ちってどうなの」
「おねだりしてるかと思って」
「勝手にしといてそれってどうなんです?」
「キスしたくなる顔をしたお前が悪い」
「何その言い訳」
「嫌だったか?」

かっこいいだけじゃない、私の兄さんは狡いんだ。
でもそんな所も全部大好きだから、結局折れるのはいつだって私の方だ。
ただ折れるだけでは悔しいから、ほんの少しの反撃くらいしたって許されるだろう。

「うばっちゃったぁ」

答える代わりにわざと下唇を軽く咥えるようにキスをして、離れ際にペロリと舌先で唇を舐めてから歌うように言ってやった。
オマケにそのままあっかんべー。と舌を出してやる。

「可愛い悪戯をする猫には躾とご褒美が必要かな?」
「うわ、やめて寒いキザだー!」
「そんな酷いことを言うのはこの口か?」

きゃー!と笑いながら叫ぶ私の口を塞ぐ兄さんの唇。
どうやら今度は私が奪われる番らしい。

「どーぞ好きなだけお召し上がり下さいご主人様?なんちゃって」
「成る程、ここまで言われたら余すことなく食べ尽くさないとな」
「綺麗に食べてね」
「勿論。頭の先から爪先まで、全部俺のだからな」

ペロリと舌なめずりをする狼に笑って身を委ねた。







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