「兄さんの手は大きいね」

そう言って重ね合った掌に笑う妹。

「お前の手は相変わらず小さいな」

たまに見ていて不安になるくらい白くて、ほんの少し冷えている指先。
この細い指で触れられると、擽ったくて仕方がない。
それでいて、兄さん、と頬を染めて切なげに求める声で触れられると、堪らなくなる。
昨夜の名残を思い出しながら掌を重ねていると、今度は指を絡めるように握られた。

「へへ、あったかい」

ぎゅ、と握って幸せそうに笑うその顔こそが、俺には暖かく感じた。
同じように指に軽く力を込めて握り返していると、少しだけ俯いた顔。
髪の隙間から覗いた耳は、ほんのりと色づいていた。

「…何を思い出してるんだ?」

そっと口を寄せて耳元で囁けば、耐えきれなくなったのかそのまま胸元に埋められた顔。
空いている方の手で戯れるように頬を撫でながら指先で耳に触れれば、気持ち良さそうな吐息が溢された。

「で、教えてくれないのか?」
「にいさんのいじわる」

反抗のつもりか、そう言って俺の首を唇で挟むようにして噛み付く姿はまるで可愛い猫のようだ。
押し当てられた舌と軽く吸いあげるようにしてから離れた口。
耳に届いたリップ音と、どうだと言わんばかりの顔で見つめる瞳。
成る程、まだ遊び足りないと見た。

「そんなに遊んで欲しいなら、昨日よりもっと沢山遊んでやる」
「わ…っ」

握ったままの手を引っ張るように仰向けに倒れれば、覆い被さるように乗る華奢な体。

「いきなりなにするの」
「思う存分構ってやろうと思ってな」

嫌か?と問えば拗ねたような顔をしてからすぐにまた胸元に顔を埋めて「いやじゃない」とくぐもった声で返される。

「なら決まりだな」

お互いくたくたになるまで遊ぼうか。
擽ったそうに笑ってられるのもいつまでもつかな?







戻る
top