※色んな人が生存している謎時空
※組織壊滅後
※色々捏造

ーーーーーー

「雫、こっちだ」

呼び出されたファミレスへ行くと、先に来ていたらしいひーくん呼ばれて席へ向かった。

「おっ、これが噂の降谷妹か」
「聞いていた歳よりも若く見えるな」
「こっちに座りな」
「駄目に決まってるだろ松田、雫は俺の隣だ」

集まって居たのは兄の友人らしい。
一課の伊達さんに爆弾処理班の萩原さんと松田さん、そして公安のひーくん。

「…なんか凄い面子だね」
「一番凄いのはお前の兄ちゃんだからな?」
「知ってる」

そうひーくんに返せばほんとお前らは変わんないな。と頭を撫でられた。
ひーくんだってそういうとこ全く変わってないくせに。
兄さんに撫でられるのも好きだけど、この幼馴染に頭を撫でられるのも好きだ。

「つーかいいのか?これ降谷の奴知ったらキレるんじゃないか?」
「あいつそんなにシスコンだったのか?」
「ゼロは筋金入りだぞ?幼馴染の俺が言うんだから間違いないさ」
「いや、それむしろ逆効果だろ」

私が知らない数年間の兄さんを、この人達は知っているのだろう。
なんだか少しだけ羨ましく思えた。
十年近い年月は、当時の私からしたらとても長くて、再会してからの私にはあっという間だった。
きっとそれは兄さんと過ごせる今が幸せだからなのかもしれない。

「それにしても降谷が付き合うタイプって全部妹と似たタイプばっかだったんだな」
「松田、それは言わない方がいいと思うぞ」
「なんでだ?どうせ過去の話だろ?」
「ああ、思い出したわ!そういやぁあいつやけに色白で黒髪の清楚系とばっか付き合ってたよな!」
「ほら、伊達も言ってるじゃねぇか」
「なぁ、いいのかこの話題」
「どうせゼロは言わないだろうし、この際そういうのも含めて教えてやってもいいだろ」
「降谷に殺されるぞお前ら」
「まぁそん時は萩原、お前も道連れだ」
「勘弁してくれよ…」

へぇ、兄さんは色白黒髪清楚系がタイプだったのか。
学生時代冗談で聞いた時は答えなかったくせに、ちゃんとタイプあるじゃないか。
帰ったらこのネタで兄さんからかえるかな。
そんな風に考えていると何処かの席でグラスが割れる音がした。
大丈夫かな?
何処の席だろうと見ようとしたが、唯くんに止められてしまった。
まぁいいか、今は兄さんの話を聞こう。
きっとこんな機会は滅多に無いだろうし。

「でもどの子も終わるの早かったよなぁ」
「名前呼び間違えるとか一番やっちゃまずいのやらかしてたからな」
「ああ、あれだろ、ヤって「待て待て松田、駄目だ、それは言うな」
「お前さんも大概過保護だな」
「かわいい妹分に下ネタは聞かせたくないんだからしょうがないだろ」
「ヤって?え、もしかして兄さん最中に名前呼び間違えたの?」
「雫…お前なんで言っちゃうんだよ…」

俺が止めた意味…と顔を覆ったひーくんだけど、学生時代も私わりとこんな感じだったよね?同級生の男子にAVの話題振られたとか言ってたの覚えてないのかな。
それにしてもまた誰かがグラスを落としたのかな?店員さんの大丈夫ですかお客様!?という叫び声が聞こえてきた。

「…お前らそろそろやめといた方がいいんじゃないか?」
「まぁもうちょっとだけ付き合えよ萩原。雫には会えなかった期間のゼロの話聞かせてやりたいんだ」
「美談にしようとしてるとこ悪いが、内容は最悪だぞ?」

こんな風に兄さんの友人、しかも警察関係者が揃うことなんて滅多にないだろう。
どんな内容でも兄さんのことを聞けるのは嬉しい。

「で、さっきの続きだけど俺らが知る限り全員だ。信じられるか?」
「伊達の言う通りだが、降谷が凄いのは間違えられてもそれでもいいって女がいた事だな」
「あぁ…兄さんモテるから…でも毎回って凄いですね」

よくもまぁ最中に毎回名前呼び間違えるな。
そんなにその人がよければ似た人なんて選ばなければいいのに。
兄さんモテるしどんな相手でも兄さんが本気出したら余裕で落とせる気がする。それくらい私の兄はかっこいい。

「雫、他人事みたいな顔してるけどお前分かってるのか?」
「何が?」
「最初の俺の言葉を思い出すんだなお嬢ちゃん」

お嬢ちゃんってアラサーにはちょっと荷が重いんですが…
松田さんに言われた言葉…妹と似たタイプ…

「え、私…?」
「正解!そんな雫ちゃんには特別にお迎えのご登場ってな」

お迎え?
いや、でもあまりの衝撃にそれどころじゃないんですけど?え、嘘でしょ何やらかしてたの兄さん。

「何がご登場だ、ふざけるなよ伊達!あとお前らもだからな!」
「兄さん?なんでいるの?」

物凄い剣幕で現れたのは間違いなく私の兄だった。
激おこ零くん見るの幼少期以来かも。

「そう怒るなって、嘘は言ってないわけだし」
「若かりし日の過ちなんざ誰でもあるだろうよ」
「唯に松田も分かってるだろうな?あと萩原、何故止めなかったんだ!」
「馬鹿言うなよ、俺にこいつらを止めれるわけないだろ?」

兄さんの登場によって更なる賑やかさが増したテーブルは注目の的だった。
…いい歳した大人が本当にすみません。
とりあえず兄さんを宥めるのが先か。

「黒髪色白清楚系ばっか抱いてたんだね」

吹き出すようにしてから笑いを堪える大人が四人。
そして顔を青ざめる大人が一人。
それをにこりと笑って見つめる大人が私である。
ほらね、一瞬で静かになった。
こちらのテーブルを見ていた人たちが一気に顔をそらしてこそこそ話しているが、静かになったようで何より。
修羅場?静かになったんだから結果オーライだ。

「ま、待て雫、違うんだ、聞いてくれ」
「お家で聞くので兄さんはお仕事戻ってください」
「今日はもう仕事はないから、だから今すぐ帰って話をしよう」

凄い、完全な修羅場になってしまった。
別に本気で言ってるわけじゃないのに、珍しく狼狽える兄が面白くてついノってしまった。
駄目だ、笑いを堪えなくては。
ここで吹き出してみろ、今夜は寝かせてもらえないぞ。それだけは困る。

「ふはっ!もう駄目だっ、我慢できん。やり過ぎだぞ雫」
「ひーくん!?なんで言っちゃうの!!」

そんなこと言ったらからかってたのバレるじゃん!私の身の危機なんだけどなんで言っちゃうかなぁ…!
恐る恐る兄の様子を伺えば、それはもう爽やかに笑っていた。
怒ってるじゃん!完全に怒ってるじゃん!確定した顔だよねあれ。今夜は絶対寝かさないって決めたよねあれ。やだよ私寝たいもん!

「これからたっぷり説明するから、家に帰ろうな」

…昼からコースなんて聞いてない。

「…ひーくんのばか」
「まぁ散々ネタにされたお兄ちゃんへのご褒美だとでも思ってくれ」
「生贄じゃん!やだ私まだここに居る!今帰ったら身体壊れる!」
「雫?」
「ごめんなさい嘘です帰ります」

そんな私達を笑いながら見送る四人が警察関係者だなんて世も末だ。
あとひーくんの事は絶対に許さないから。
帰宅後、昼から朝までコースだったのは言うまでもない。私悪くないよね?なんで?
ぐったりともたれかかる私を幸せそうに見つめてキスをする兄さんの顔を見たら、どうでも良くなってしまった私もどうしようもないらしい。


ーーーーーー

「にしても降谷のやつ妹の事となるとすげぇな」
「グラス二回も割るとからしくねぇことしてたしな」
「それはお前らがあんな話題振るからだろ…お前も、よかったのか?あれで」
「だってまだ死にたくないだろ?」

雫には悪いが生贄になってもらった。
流石に昼からはかわいそうだとは思うが、どうせ雫のことだ、最後は許してしまうに違いない。
あの馬鹿ップルに修羅場なんて一生来るわけがないのだから。







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