※成長した降谷双子
※零は警察 透は私立探偵

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「雫ー」
「零兄さんお疲れ様」
「…疲れた」

5日ぶりに帰宅した零兄さんは帰ってきたかと思えばなだれ込むように抱きついたっきり離れない。
いつもしっかりしている零兄さんが此処までとは…何徹したんだろう。
考えただけでゾッとしたのでこれ以上は考えるのをやめた。

「兄さん、一旦ベッド行こう?スーツもシワになるから脱いで」
「…もうその気力すらない」
「じゃあ脱がせてあげるから、ベッドまでは頑張って」

うん。とまるで透兄さんみたいな声で答えた零兄さんはのそのそと重い足取りで自室のベッドまで向かう。
楽な仕事はないけれど、零兄さんの仕事は相当疲れるのだろう。
ぼすん、とベッドに座った兄さんからジャケットを脱がせてハンガーへとかける。

「雫、こっちも」

とんとん、と気怠げにネクタイを指差してはやくと急かす兄さん。
ネクタイも解けない程弱ってるのか…

「ボタン少し開けようか」
「…ん」

ネクタイを解いている間に首元に顔を擦り寄せられるものだから、手元が見にくくて上手く外すことができない。

「ねぇ兄さん、ちょっとだけ顔を上げてもらっていい?ネクタイ取れないよ」
「ん」

大人しくうえを向いてくれたおかげで見えるようになった手元。
今のうちに抜き取ってしまおうと解いたネクタイを抜き取って、ボタンを二つ程開ける。
これで少しは楽になったかと顔覗き込めば、ぱちりと目が合ったと思った瞬間頭を引き寄せられていた。

「…ん!?んぅ…っ!!」

片手で後頭部を抑えながら、空いている方の手で私の頬を撫でる兄さんはどことなく上機嫌だ。
ぴったりとくっつけられた唇のお陰で顔は見えないけれど、なんだか鼻歌が聞こえてきそうなくらい上機嫌な空気を醸しだしている。
いい加減離して欲しくて頭を引こうとすれば、後頭部に回された手がそれを許さない。

「…ん…ふわ…っ!?」

はむ。と下唇を軽く唇で挟まれたかと思えば、感触を確かめるように何度も何度も押し付けられる唇。
しまいにはぺろりと唇を舐められて、いい加減にしろと胸を叩くが、調子に乗ったらしい零兄さんはやめてくれない。
むしろこの抵抗すら楽しんでいる気すらするのだから笑えない。

「ちょっと、人の妹になんて事してくれてるんですか」
「んぁ…っ」

後ろから私の頬を撫でるようにして割って入った手が、零兄さんと引き離してくれた。
ぷはっ、と漸く酸素を取り入れることができて安心していると、お腹に回された腕が後ろへと引き付ける。
背中全身で感じた体温に首を捻って見上げると、不機嫌そうに顔を歪めた透兄さんがゴミを見るような目で零兄さんを見下していた。
…今回ばかりは零兄さんが悪い。

「俺の妹でもあるだろ。返せ」
「これだからムッツリは…盛りのついた犬じゃあるまいし、冷静な判断ができないのならさっさと寝たらどうです?」

ぴりぴりと張り詰めたような空気に、兄弟喧嘩勃発の空気を感じ取って慌てて透兄さんの腕から抜け出せば、咎めるように名前を呼ばれた。
助けてくれたのにごめん透兄さん、とりあえず仕事でお疲れの零兄さんを寝かすことが最優先だから。
いい加減零兄さんを寝かせないと色々とまずい。
ただでさえワーカーホリックな兄は休める時に休ませないと、いつか体を壊すんじゃないかと不安になる。

「零兄さん、お願いだからもう寝ようよ」
「雫、そこの犬は布団でも被せておいたらその内寝るさ」
「雫が添い寝してくれたら寝るよ」
「はあ?さっきまで何してたか分かってますか?そんな奴と添い寝なんて誰がさせると思ってるんだ」
「…じゃあ添い寝は無理だけど、寝るまで側に居てあげるから」
「雫!」

だってこうでもしなきゃ零兄さん寝てくれないと思うし。
すっかり拗ねてしまった透兄さんに謝れば、別に気にしてないよ。と言って出て行ってしまった。
あれ絶対に気にしてる。

「…はぁ、零兄さんは体休ませてね」

ベッドに横にして布団をかけてやれば、雫も。と言われてしまった。
人の話聞いてたかなこの人。
こういう時の零兄さんは疲労からか普段よりも幼くなる。

「…雫」
「ちゃんと居るよ」

自分がよくしてもらったように、寝るまでの間は優しく頭を撫で続けた。
暫くして聞こえてきた寝息と、気持ち良さげな寝顔を確認して、そっと部屋を後にした。

ーーーー

「…透兄さんおこっちゃった?」
「…別に」

リビングのソファーの背もたれに腕をかけて、そこに顔を埋めている透兄さんに声をかければ、目元だけ上げて答えた。
その声は拗ねていた。

「どうしたら機嫌なおしてくれる?」

目元を指先で撫でるように触れれば、そのまま手を握られてしまう。

「零が起きてくるまでの間、僕と居てくれたら許してあげる」
「…キザだなぁ」

ちゅ、と手の甲にキスをしてあざとく笑って見せた透兄さん。
おいでと両手を広げられて、どう座ろうかと悩んでいれば腕を引かれてバランスを崩した体が倒れこむ。

「…重くない?」
「全然。なんならコアラみたいに抱きついてくれてもいいんだよ?」
「それはさすがに…」

膝の上でお姫様抱っこみたいにされながら、その首に腕を回せばすっかり上機嫌な兄さんが頬にキスをしてくる。
日本人なのに挨拶と言わんばかりに頻繁にキスをしてくる兄たちは、外国の血でも流れてるんじゃないんだろうか。

「ちょ、兄さんそこだめ、くすぐったい…!」
「えー?どうしようかなぁ」
「ふはっ、やだってば!ちょ、脇腹撫でないで…!」

服の下から手を突っ込んで、直に脇腹を擽られるように撫でるものだから、擽ったくて仕方ない。
逃れるように身をよじって体を密着させれば、そのままソファーに雪崩れ込んで二人で笑った。

「このまま寝ちゃおうか」
「えぇ、多分零兄さんが見たら怒るから駄目」
「零とキスしてただろう?これ位してくれなきゃ不公平だ」
「わ、ちょ、なんで足絡めるの…!降りれないじゃん…!」
「降ろしません」

長いおみ足が絡みつくようにソファーから降りるのを阻止してくるものだから、私の体は透兄さんの上に乗っかったままだ。
ていうか私からしたわけじゃないのに。

「そんなにキスしたいなら零兄さんとすればいいじゃん」
「正気で言ってるのかな?」
「ごめんなさいごめんなさい冗談です!ちょ、変な手つきで腰撫でないで!」
「変?僕は普通に撫でてるだけなんだけど…どう変なの?」
「やーめーろー!」

手を突っ込んでくるな!!
かと思えば、今度は人差し指で背中をなぞるように撫でられて、驚いてしがみつけば楽しそうな笑い声。
この野郎…!

「もうやだ透兄さんなんて嫌いだ」
「残念、僕は好きなんだけどな」
「くっそう、透兄さんには効かないのか…!」
「そんなのが効くのは零だけだよ」

効きすぎるから零兄さんには相当な事がない限りは言えないんだよ。

「はぁ、もういい疲れた」
「ならこのまま寝るしかないね」
「…そうだね。もういいよ透兄さんのことは抱き枕だと思うから」
「僕としては毎晩してあげても構わないけど?」
「お断りします」

ーーーーーー
一眠りして自分がした事思い出して顔面蒼白になった零お兄ちゃんは、妹に謝る為にリビング来たらソファーでくっついて寝てる二人を見て更に追い討ちをくらう。
実は起きてた透お兄ちゃんはそれを見てドヤって兄弟喧嘩が勃発するいつものパターン




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