※醜い降谷双子戦争第2ラウンド

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ぱくり、と透兄さんの口が私の頬を食べた。

「…え、なんで?」
「雫の頬があまりにも美味しそうだったから、つい」

てへぺろってか。
かわい子ぶっても様になるのはイケメン故か。

「バルス!」

人のこと抱き抱えて一緒に大人しく本読んでると思えば、こういう突拍子も無いことをしてくるのが透兄さんだ。
なんというか、透兄さんと落ち着いて本なんか読めるわけがなかった。

「そんな冷たいこと言わないで」

するすると腰を撫でてから下腹部を撫でて耳元で囁くのは本当に兄だろうか。

「零兄さん!零兄さんたすけて!!」
「また透か!大丈夫か?怖かったな」

飲み物を取りに行って戻って来た零兄さんに腕を伸ばせば、引き上げて助け出してくれた。
ぞわぞわした。としがみつけば、もう大丈夫だからな。と優しく背中を撫でてくれる。
やっぱり零兄さんの側は落ち着くなぁ。

「ずるい」
「普段の行いの差だ」
「零だって下心あるくせに、そういうのをむっつりって言うんですよ?ほら、雫、そんなむっつりにくっついてる方が危険だからこっちにおいで」

透兄さんは口調はやたら優しいくせに、する事は酷いから嫌だ。主に人がしてることの妨害とか。
甘ったるい女の子が悲鳴をあげるような声も、私からしたら確信犯の振る舞いだ。
透兄さんは零兄さんと違って自分がどんな言動をすれば周りが喜ぶか知った上でやっている。
言うならばサービスしないイケメンが降谷零で、無責任にサービスをするイケメンが降谷透だ。
はいはいこういうのが好きなんでしょう知ってますよ。やるからもうほっといてくれ。っていうのが見ていて分かる。
あと透兄さんは零兄さんのフリして口説いたりするから酷いと思う。
結局そのしわ寄せは零兄さんへいく。
零兄さんの胃は大丈夫だろうか。

「零兄さんがいい」
「というわけだ、潔く諦めるんだな」
「なんで雫はそんなに零がいいんだ。僕とたいして変わらないでしょう?」

それは外見だけの話だ。
双子とはそれなりに生き辛いのもあるのだろう。
昔零兄さんだと思って告白した女子は、相手が透兄さんと分かっても透君でもいいから付き合ってくださいと言ったらしい。
私としてはオススメしないのでやめた方がいいですよ。と助言をしたい展開である。
完全な偏見だけど、透兄さんは人付き合いにおいて浅く広くってタイプだし、平然と女性を取っ替え引っ換えしそうだ。
体だけの関係とかむちゃむちゃありそう。
その上、意外と繊細なのが透兄さんだ。
本人はあっさりと受け流すように見えてああいうことがあると結構根に持つ。
性格がちょっぴり悪いというか、透兄さんは捻くれた所があるから、その結果こういう性格になったんだろう。

「透兄さん邪魔してくるんだもん」
「雫があまりにも可愛くてつい」
「ついでほっぺ食べられるとかそのうち私なくなっちゃうよ」
「その時はお兄ちゃんが残らず綺麗に食べ切ってあげるから安心してくれていいよ」
「やめろ!」

ぎゅう、と零兄さんが守るように腕に力を込めた。

「そんなに違うかなぁ」
「おんなじ顔でおんなじことしてたらそっくりだけど、透兄さんと零兄さん全然性格違うじゃん」
「じゃあ雫は零みたいなやつが好きなのかい?」
「兄さんたちのことは好きだけど、透兄さんはベタベタしてくるから苦手。あと小さい時騙されまくったし」
「あれは雫が可愛かったから、ついからかいたくなっちゃったんだよ」
「可愛いって言えば済むと思ったら大間違いだからね」

毎回毎回その言葉で流そうとしやがって…!

「とにかく、透はもう雫にひっつくな。穢れる」
「ただのスキンシップでしょう?何故零にそこまで言われなきゃいけないんですか」
「お前がろくなことしないからだろ!」

このやり取り毎日見ている気がするのは気のせいだろうか。

「そういえば雫、お前透に何をされたんだ?」
「ほっぺ食べられた」
「キスしただけだろう?ほら、ちゃんとかわいいほっぺついてるじゃないか」

笑いながらムニムニと人の頬を摘む透兄さんの手を零兄さんがはたき落としたかと思えば、ぱくり。
反対側の頬が食べられて驚いていると、ぺろりと舐めて離れて行く顔。

「…なんで?」
「これで平等だろ?」
「違う!今そういう話してない!!」
「ほらね、僕の言った通りだろう?」

零の方が危険なんだから近付いたらダメじゃないか。と零兄さんから引き離した透兄さんが言う。
ねぇ首にキスしてくるのやめてくれませんかくすぐったい。

「ていうかどっちもどっちだよ!!」

なんなんだこの双子!頭おかしいよ!!

「私ほっぺついてる?大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。そんなに心配ならもう一度キスしようか?」
「雫、俺はそこの変態と話があるから終わるまで唯の所行ってろ」
「僕は無いんですけどね」

もういい加減にしてほしい。

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透お兄ちゃんはナチュラルに紫の上計画とか立ててそうだし、普通に阻止していた零お兄ちゃん。
誰か零お兄ちゃんの胃を労ってあげるべき。
でも零お兄ちゃんもたまにぶっ飛んでるから結局助けて唯くん!になる
変な男に絡まれてる時だけ華麗なる連携プレーで助け出すシスコンツインズはセコムを超えると思う。




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